本文へジャンプ
お問い合わせ   サイトマップ
ぐんま天文台 > 活動と組織 > 研究活動 > 談話会 > 過去のぐんま天文台談話会 #141-#150

過去のぐんま天文台談話会 #141-#150

(敬称略)

第141回 2008.5.20 19:00〜
内海 和彦 ( 広島大学 )
「J型炭素星に関する新事実」

J型炭素星は非常に強い13C帯とλ6708 Li線を示す炭素星で、HD16115, Y CVn, WZ Casなどがよく知られている。すべてのJ型星でCN red帯の profile が非常によく似ていることから、13CNの回転線が12CNの回転線の間を埋めて、red CN帯そのものが強度の変化するcontinuum になっていて、原子線はそのCN帯から出ていることに気付いた。このことから、星にとり大きく異なる Na D線の強度は CNのopacityで決まり、またすべてのJ型星で Li の比量は WZ Cas と同程度と思われる。J型星は HD16115 (C2)から WZ Cas (C9)まで温度系列になっていると考えられる。

第142回 2008.6.3 19:00〜
柴橋 博資 ( 東京大学 )
「A型特異星の星震学」

A型主系列星には、他の主系列では決して見られない数キロガウスもの強い磁場があり、またスペクトルには希土類元素が異常に強い、「A型特異星」が多数見られる。異常な元素組成の原因として輻射による元素の拡散が考えられているが、拡散が起きるためには大気は静かでなければならない。実際、A型特異星には、同じくA型主系列星であるが元素組成に異常のない楯座デルタ星型脈動星に見られる周期2時間程度の脈動は検出されておらず、これは拡散仮説に好都合であると考えられて来たのであった。ところが、周期10分程度という極短周期の微小な振動がA型特異星から検出され、事態は今まで以上に面白くなった。今やこういった高速脈動を示すA型特異星は30個以上も発見されている。これらの脈動はこれまで中小望遠鏡による高速測光で発見されて来たのだが、最近では大望遠鏡を使った高分散分光観測でも脈動が検出出来るようになってきた。元素組成異常、強い磁場の存在する星での、異常に短周期な脈動というのは、理論的に考えても他に例がないので興味深いものであるし、脈動現象から逆にこれらの特異星の構造を探るという可能性も生まれて来た。講演では、これらの研究の進展ぶりを概観し、最近の話題について述べる。

第143回 2008.7.1 19:00〜
中道 晶香 (ぐんま天文台)
「天体の合体成長 〜ダークマター乱流のスケーリング〜」

主に重力で結びついている宇宙の系(自己重力系)では、空間スケールの小さな天体から大きな天体について、同じような構造が観測されています。この「スケーリング」の起源を解く鍵は、ダークマターの乱流状態だとするのが私達のアイデアです。宇宙の構造が合体成長によって形成されたと考え、定常エネルギーの流れを仮定すると、 (1)球状星団や銀河団では空間スケールが大きくなると速度分散が大きくなること、 (2)様々な天体の角運動量が質量の2乗に比例すること、 (3)様々な天体の空間スケールが大きくなると、光度に対する質量の比率が大きくなること、 (4)密度揺らぎのパワースペクトル、 (5)様々な天体の空間スケールが大きくなると磁場が小さくなること、 の5種類の観測結果を説明しました。これらの観測結果は全て、単位質量あたりの定常エネルギーの流れが 0.3cm^2 / sec^3 であることを示唆しています。

第144回 2008.7.15 19:00〜
奥田 治之 (宇宙科学研究所/ぐんま天文台)
「南のスバル - 奇妙な五つ子星と銀河中心に群がる大質量星団 -」

そろそろ天の川のよく見える季節になりました。この天の川の中心には、巨大なブラックホールが存在すると言われていますが、その近くに、およそ20年前に、とても奇妙な星が見つかりました。それは、スバル星に似た形をした、五つの明るい赤外線の星として発見されました。それらの星は顔、かたち(特徴)が瓜五つで、赤外線五つ子星と名付けられました。ただ、その顔には目も鼻もなくのっぺらぼうで、特徴があまりにも単純で、生まれ、育ちがまったくわかりませんでした。その後、その周辺には大質量の年齢の若い星(O型星やオルフ・ライエ星)がいっぱい見つかって、大規模な星の集団(大家族)を作っていることがわかりました。近くには同じような星団、アーチ星団も見つかり、銀河中心にも同じような星の集団があることも明らかになりました。これらの星は生まれた時の質量が太陽の数10倍から、100倍を超えるようなものが多く、こんな大質量の星の集団が銀河中心に集中しているのはとても不思議なことです。最近になって、素性のわからなかった五つ子星は、干渉計を使った巧みな方法によって、遂に、その正体が明らかにされ、ネズミ花火に似た渦巻き構造を持っていることがわかりました。このような研究の流れを、観測データを紹介しながら、くわしくお話しします。

第145回 2008.9.9 19:00〜
本田 敏志 (ぐんま天文台)
「すばる望遠鏡を使った銀河最古の星の探査」

宇宙は約140億年前にビッグバンと呼ばれる大爆発によって誕生したと考えられていますが、誕生直後の宇宙には水素とヘリウムしか存在せず鉄などの重い元素はまったくありませんでした。その後、水素とヘリウムから作られた第一世代の星によって重元素が作られ、宇宙にばら撒かれていったと考えられています。もし、今でも第一世代の星が生き残っていると、その星の組成には宇宙初期の様子が刻まれていると考えられ、元素の起源や宇宙初期の星形成、銀河の進化について重要な情報が含まれていることが期待されます。私たちは、ハワイのマウナケア山頂にある、すばる望遠鏡などをつかって重元素の少ない第一世代の星の探査を行っています。今回は、これまでに発見された最も重元素の少ない星の特徴や、その起源、そしてすばる望遠鏡で実際どのような観測を行っているか、などを紹介します。

第146回 2008.9.30 19:00〜
筧 伸浩 (銀河の森天文台)
「銀河の森天文台における低緯度オーロラ及び衛星追尾観測について」

北海道は十勝の陸別町にある銀河の森天文台では北緯43°27'という国内でも比較的緯度が高いという土地柄を活かし、ごくまれに出現する低緯度オーロラの観測を行っている。また、同天文台に設置されている115cm反射望遠鏡は、高速で移動する人工衛星も追う能力を備えているため、天文台では低軌道衛星の追尾観測も行っている。今回は銀河の森天文台におけるこれらの観測について、天文台で撮影された珍しい低緯度オーロラの写真や地上の望遠鏡から撮影された国際宇宙ステーションの写真などと共にやさしく解説する。

第147回 2008.10.21 19:00〜
小宮山 裕 ( 国立天文台 )
「すばる主焦点広視野CCDカメラで探る近傍宇宙」

すばる望遠鏡の特長の一つは、8-10m望遠鏡の中で抜きん出た広い視野を持つ主焦点を有することである。主焦点に取り付けられた主焦点広視野CCDカメラ( Suprime-Cam )はそのサーベイ能力を活かし、最遠方宇宙の銀河から太陽系深部の小天体に至るまで、様々な知見をもたらしている。Suprime-Camは近傍宇宙の天体を探る上でも大きな力を発揮しており、近傍宇宙の深部の姿を明らかにすることで様々な成果をあげている。本講演では我々が進めているかみのけ座銀河団の広視野サーベイ計画について紹介する。この広視野サーベイ計画は、HSTに取り付けられたACSを筆頭に世界各地の望遠鏡を利用して、多波長にわたる高空間分解能データを取得し、リッチな銀河団の典型であるかみのけ座銀河団を総合的に理解しようとする計画である。すばる望遠鏡では、Hα輝線という新たなプローブを用いて、銀河団最深部の活発な現象( 星形成・ガス )にスポットを当て、かみのけ座銀河団の姿にせまろうとしている。また、講演の最後に、すばる望遠鏡のサーベイ能力の大幅な拡大を目指して現在鋭意進められている Hyper Suprime-Cam ( HSC ) 計画について紹介し、今後の展望についてまとめる。

第148回 2008.11.18 18:00〜
Hakim L. Malasan ( バンドン工科大学 )
「Introducing South-East Asia Astronomy Network (SEAAN)」

South-East Asia Astronomy Network (SEAAN), established on 23 March 2007 in Bangkok, Thailand, is a forum for networking and linking astronomical research and educational activities within South East Asia region. Currently six countries, i.e. Thailand, Indonesia, Malaysia, The Philippines, Laos and Vietnam are the members of this network, and in the future, Singapore will possibly join in. SEAAN is motivated by the growing needs to exchange information and to pursue collaboration in astronomy and astrophysics among South-East Asian countries. The establishment of SEAAN was also due to a plan to install a 2.4 meter reflector at the summit of Doi Intanon, Chiang Mai, Thailand in 2009.

This talk will present an overview of SEAAN which is currently equipped with four working groups, i.e. (1) Radio Astronomy, (2) Optical Astronomy, (3) Theoretical Astrophysics and Cosmology, and (4) Cosmic rays and Solar Physics and scoping on research and educational activities. National Astronomical Research Institute of Thailand (NARIT) is hosting the website of SEAAN (http://www.narit.or.th/seaan/) which contains the basic information of SEAAN including member countries. A Memorandum of Understanding is currently being drafted to be signed by highest authorities of each member country by 2009.

With the plan to construct and install a high-resolution spectrograph to the 2.4 meter reflector in the near future, SEAAN Optical working group will join research on planetary search in the EAPSNET (East Asia Planet Search Network) of EAMA (East Asia Meeting in Astronomy).

第149回 2008.12.3 18:00〜
古在 由秀 ( 東京大学 ), 沖田 喜一 ( 国立天文台 )
「追悼:ぐんま天文台副台長清水実先生 -天文学に残した偉大な足跡-」

ぐんま天文台の副台長を務められた清水実先生が、2008年10月20日に亡くなられました。

先生は、第2次世界大戦後間もなく東京大学東京天文台に就職され、以来、長年にわたって観測天文学を技術面から支えてこられました。太陽を中心とした天体物理学の発展に寄与された後、岡山天体物理観測所や木曾観測所などで御活躍され、大型望遠鏡の技術に多大なる功績を残されています。特に、岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡が今日まで常に観測研究の最先端に位置してこられたのは先生の御活躍があってこそのものであり、その技術や思想は現在のすばる望遠鏡などにも直接結び付いているものです。また、常に観測研究の現場におられ、次世代の研究者や技術者の育成にも多大なる貢献をなされました。今日の観測天文学を最先端を支えている人々のほとんどが何らかの形で清水先生の薫陶を受けていると言っても過言ではありません。

退官後は、美星天文台や陸別銀河の森天文台など、大型の公共天文台の設立や運営にも力を入れられました。観測研究を基礎とした本物の天文学の教育や普及を目指したもので、その理想を最大限に反映するものとして、ぐんま天文台の建設と発展に御尽力されてきました。

清水先生の業績に対して、東京天文台の同志でもいらっしゃる古在ぐんま天文台長と、清水先生の後を継ぎ国立天文台で第一線の観測天文学を支えている沖田喜一先生にお話をしていただく予定です。

第150回 2008.12.16 18:00〜
岡崎 彰 ( 群馬大学 )
「アルゴル型食連星の偏光分光観測」

アルゴル型連星とは、高温の主系列星(主星)と低温の準巨星(伴星)から成る連星で、近接連星進化の過程で両成分星の質量が逆転したものと考えられています。現在も、伴星から主星に向かって、連続的あるいは断続的に質量が流れ出て、主星を取り囲むように流れ込んでいるとみられています。しかし、主星周辺のガスの振舞いについては、必ずしも十分にわかっているとはいえません。私たちは、アルゴル型連星のうち、主極小で皆既食を示すものに着目して、食内における偏光分光観測を実施しました。その結果、いくつかの例では公転軸位置角を決定でき、また、主星周辺のガスの幾何学的分布についても一定の手がかりを得ることができましたので、それらについて報告いたします。

講演者と題目の一覧

概要集: 1-10,  11-20,  21-30,  31-40,  41-50,  51-60,  61-70,  71-80,  81-90,  91-100,  101-110,  111-120,  121-130,  131-140,  141-150,  151-160,  161-170,  171-180,  181-190,

今後の予定