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過去のぐんま天文台談話会 #131-#140

(敬称略)

第131回 2007.11.6 18:00〜
田口 光 ( ぐんま天文台 )
「RV Tau型変光星 U Monの観測」

ぐんま天文台150cm望遠鏡に設置されている高分散分光装置(GAOES)にて、RV Tau 型星U Monの観測を行い、その化学組成を求めた。これまでにU Monの詳細な組成を調べた研究は3つあるがその結果は必ずしも一致していない。そこで、今回の観測データを用いて、3つの中での差異が顕著なMg, V, Crの元素量の測定を重点的に行った。U Monを含めたRV Tau型星において、金属量の欠乏が一般的にみられる傾向であるが、その原因としては、ガス・ダスト凝縮による説と過電離説がある。測定を行った3つの元素に対しては、過電離の影響はないと考えられているが、Vの化学組成にのみ、ダスト・ガス凝縮の影響をうけている可能性がある。

観測データの解析には、太陽を標準星とする相対成長曲線解析法( 相対成長曲線解析プログラムについては、放送大学の吉岡准教授が作成した吉岡プログラム )を用いた。解析の結果、有効温度、表面重力加速度、ミクロ乱流速度などの大気パラメータ及びFeの量は、過去の観測結果とよく一致していることが確認された。Crの量についてもほぼ一致していた。一方、Vの量に関しては、Feに対する相対的な欠乏がわずかに見られたが、ダスト・ガス凝縮説の影響かどうかは、今回の測定結果からは、断定することは困難であった。Mgの量に関してもFeに対する相対的な欠乏がやや見られたが観測誤差によるものと思われる。談話会では、これまでの観測結果、今後の計画について報告する。

第132回 2007.11.20 18:00〜
阿部 新助 ( 神戸大学 )
「太陽系小天体探査」

2005年9-11月に近地球型小惑星イトカワを探査した「はやぶさ」に搭載されたレーザ高度計(LIDAR)により、小惑星イトカワ(535x294x209 m)の質量と表層地形を計測した。太陽輻射圧、探査機のスラスタ噴射圧を考慮し、重力場は小惑星の詳細形状モデルを使ったポリヘドロンモデルを適応した。小惑星の平均密度をパラメータに、小惑星を非周回する探査機の運動をシュミレーションすることにより、密度の決定を行った。イトカワの質量は、3.6x10^10 kg、平均密度は、約2 g/cm^3と見積もられ、コンドライト組成(密度3.2 g/cm3)を仮定すると、約40%の空隙率が推定された。近赤外線分光計(NIRS)やX線分光計(XRS)の観測から、イトカワの組成はLLタイプの普通コンドライト隕石と同定された。また、地上に落下して回収されている隕石のうち、軌道情報が得られているものは過去に9例しかないが、いずれも母天体は同定されていない。一方、地球には年間2〜4万トンの宇宙物質が降り注いでおり、地球流入ダストの多くは、彗星が主な起源のサブmmサイズのダストと考えられている。しかし、その軌道から小惑星起源と思われるダストも火球として捉えている。イトカワ起源と考えられる隕石火球や、日本のアマチュア観測網などの協力で得られたイトカワと同じ、アポロ型小惑星軌道から到来した炭素質コンドライト火球の軌道決定と分光観測などについて紹介し、小天体とメテオロイド(隕石,流星,宇宙塵)のリンクや、大気突入発光の素過程について議論する。

第133回 2007.12.4 18:00〜
奥村 真一郎 ( 日本スペースガード協会 )
「美星スペースガードセンターにおけるスペースガード活動」

「スペースガード」とは、地球に衝突することにより地球環境に悪影響を与え、文明や生物種の絶滅を引き起こす恐れのある彗星や小惑星などの地球近傍小天体( Near Earth Object: NEO )の早期発見と監視、その追跡のための観測を実施し、それらの天体の地球衝突回避を目指して情報の社会的共有をはかることを言う。

世界的には、スペースガード活動の歴史は1989年に完成した「スペースウォッチ望遠鏡」によるサーベイ観測から始まる。この観測により地球と月の距離の半分まで接近する小惑星「1989FC」が発見されたことや、6500万年前に恐竜を絶滅させたと考えられている小惑星衝突による巨大クレーターがユカタン半島に発見されたこともあり、NASAで「NEO検討委員会」が設置され、やがて国際天文学連合(IAU)においてもNEOワーキンググループが設立された。その後の議論において、天文学の専門家だけで閉じて活動するのではなく、IAUから独立した組織を作るべきだと提案され、NEOの検出と研究を支援する組織として1996年3月に国際スペースガード財団が設立された。

日本においては、1996年10月に日本スペースガード協会が発足、啓蒙普及活動を進めるとともに美星スペースガードセンターにおける光学観測を365日体制で実施している。本講演では、美星スペースガードセンターにおける活動、特にNEOおよびスペースデブリに関する観測と研究について、これまでの成果や今後の予定などについて紹介する。

第134回 2007.12.18 18:00〜
熊谷 紫麻見 ( 日本大学 )
「極超新星1998bwの後期光度曲線による爆発モデルの決定」

ガンマ線バースト980425/超新星1998bwは典型的な極超新星のロング・ガンマ線バーストと考えられている。距離が約 40Mpcと比較的近いため、VLTやハッブル宇宙望遠鏡により、爆発後数年間の可視光・赤外線の光度が観測され、爆発後100日以降の減光が Co56 の寿命と同期しており、その後は外層の影響によって減光が急になったり、寿命の長い Co57 の影響が出てきたりといった、他の大質量超新星と同様の光度曲線が得られた。これらから、爆発時に合成された Ni56 や Ni57 の質量、外層の質量や爆発エネルギーなどがわかった。

第135回 2008.1.22 18:00〜
立原 研悟 ( 神戸大学 )
「非常に若い小質量原始星class 0天体の観測的研究」

星の形成と死は銀河の進化を司るもっとも基本的かつ重要な過程である。しかし星形成の瞬間の観測的研究は、技術的または物理的困難から、これまで非常に遅れていた。星形成活動は高密度かつ小さな分子雲コアの中心部で進むため、光学的に厚い濃いガスとダストに隠されており、さらにタイムスケールが短いために、検出頻度も小さいためである。近年のミリ波、サブミリ波の観測装置の発達により、ごく若い原始星( class 0天体 )の発見が続いたが、近傍の星形成領域ではいまだに十数個程度が知られるのみである。一方これまでは、中間赤外線より短い波長の放射はすべて星周ガス・ダストに吸収されて見えないと考えられていたが、Spitzer宇宙望遠鏡の高感度観測で、class 0天体中心星からの散乱光が検出された。これら最新の観測成果を中心に、class 0天体の物理的性質を紹介する。

第136回 2008.2.5 18:00〜
Dario dela Cruz ( PAGASA, Philippine )
「Improving CCD Photometry for the Philippine Atmospheric Geophysical and Astronomical Services Administration (PAGASA) Astronomical Observatory」

The PAGASA Astronomical Observatory was constructed in 1954 with in the campus of the University of the Philippines in Quezon City. It remained there even though it is no longer ideal place for an observatory because of its bright surroundings. It was equipped with 15 cm refractor telescope and photographic accessories before the arrival of the 45 cm telescope. Observation of sunspot, lunar occultation and other astronomical events were undertaken, sunspot data were sent to International Data Center and lunar occultation data were sent to International Lunar Occultation Center (ILOC).

In 2001, PAGASA acquired a 45cm telescope donated by the Japanese Government thru its cultural aid program. Observation of variable stars using CCD was started in 2003 and observed images were stored in the data base for photometry and analysis. Due to the insufficient knowledge of the observatory staff in using IRAF software, the images have not been reduce and analyzed. It is still uncertain whether the images recorded were good for photometry analysis. It is therefore necessary to process these images to identify the strength and weaknesses of the method of collecting and displaying data of the telescope.

The on the job training granted by the Gunma Astronomical Observatory will be a big help in improving the capability of CCD observation and reduction of data for the PAGASA Astronomical Observatory staff.

第137回 2008.2.19 18:00〜
比田井 昌英 (東海大学)
「惑星を持つ星の化学組成と惑星形成」

太陽系以外の恒星に惑星が発見されてから13年目になり、これまで発見された系外惑星は260個以上にのぼる。惑星の親星については、惑星形成との関連で質量、年齢、化学組成等が調べられてきている。本講演では、親星の元素組成に焦点を当て、これまでの元素組成解析から判明した主な結果を概観する。 次に、これまで講演者らが行なって来ている、惑星を持つ星の軽元素と鉄族元素の振る舞いについて得られた結果を紹介し、さらに、これらの元素の振る舞いと惑星の物理量(~質量、軌道長半径、離心率など~)の間の相関を議論する。

第138回 2008.3.4 19:00〜
松浦 美香子 (国立天文台)
「系外銀河のAGB星 - 星の内部で合成される炭素」

Asymptotic Giant Branch (AGB)星は中小質量星(主系列星の時点で1から8太陽質量 )の進化の末期の段階に相当する。AGB星の重要な点は星の内部で炭素などの元素を生成している点にある。このため、AGB星は銀河の化学進化に大きく寄与している。

さて、近傍銀河の多くは、銀河系よりも金属量が低い。こういった低金属量な環境にあるAGB星は、われわれ銀河系と同じような性質を持つのかを調べた。Spitzer宇宙望遠鏡と Very Large Telescope によって得られた観測結果は、星が生まれたときの金属量よりも、星の内部で合成された元素によって、星の大気の性質が決まっていることを示している。この観測結果について発表する。

第139回 2008.3.18 19:00〜
Hanindyo Kuncarayakti ( バンドン工科大学 )
「Mutual collaboration of GAO and ITB in star cluster studies」

Being one of the most important objects in astrophysics, star clusters are widely studied in the fields ranging from stellar physics, galactic astronomy, to cosmology. Most of our understandings of the two kinds of star cluster i.e. open and globular clusters are mainly based on Galactic objects. Albeit being important and useful, the majority of known galactic open clusters are still poorly studied. Of about 1700 known galactic open clusters, only 38 % have their age, reddening, and distance estimated (WEBDA catalog). These numbers are only a small fraction of total population of galactic clusters, which are mostly hidden deep within the Galactic plane. On the other hand, the known populations of around 150 globular clusters are thought to be covering a good fraction of its total population in the Galaxy. These globular clusters are mostly well studied, but still there are several existing problems which need further investigations.

Since the start of mutual collaboration between GAO and ITB, several scientific works on star cluster had been carried out. Some examples are the works of Kuncarayakti et al. (2005, Proc. 9th APRIM) on Roslund 1 and Adinugroho (2005, thesis) on NGC 7654. In addition, star clusters are one of the favorite objects observed during GAO-ITB Remote Observation Services. Considering the importance and opportunities, it would be a great advantage for both GAO and ITB to work together in this interesting field.

第140回 2008.4.15 19:00〜
橋本 修 ( ぐんま天文台 )
「ぐんま天文台の国際共同活動 - インドネシアとの連携この10年 -」

ぐんま天文台の5つの基本方針のひとつに国際協力と言う項目がある。これに従い、ぐんま天文台では様々な国との共同事業を行ってきた。一般的な意味での国際共同観測・共同研究に加え、特にアジア地域との研究協力に活動の重点を置いてきたのが特長である。その結果、「東南アジア天文学ネットワーク」(SEAAN)の設立に見られるようなこの地域での近年の目覚しい天文学の発展に対して大きく貢献するところとなり、ぐんま天文台の活動は各方面から高く評価されている。

このようなアジア地域に対する活動の中核となっているのが、ぐんま天文台とインドネシアのバンドン工科大学(ITB)との交流である。2002年に協定合意の調印がなされ、2007年の延長を経て今日に至っており、以来様々な活動が実行されている。ここでは、実質的には2002年の正式合意以前から既に10年以上にわたって継続しているITBとの共同活動を振り返り、その現状と未来を展望する。また、他の国々を含めた東南アジア地域での天文学、および各国の状況についても紹介したい。

講演者と題目の一覧

概要集: 1-10,  11-20,  21-30,  31-40,  41-50,  51-60,  61-70,  71-80,  81-90,  91-100,  101-110,  111-120,  121-130,  131-140,  141-150,  151-160,  161-170,  171-180,  181-190,

今後の予定