第15回天体スペクトル研究会

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天体スペクトルに興味をお持ちの方、学校などで天体スペクトルを教えている方、分光器の研究や制作をされている方、天体スペクトルを研究している方々を対象に、第15回目天体スペクトル研究会をぐんま天文台で開催しました。今回は初めて関東地方での開催となりました。

プログラム

各講演とも、質問時間を合わせて20分です。(講演15分+質問5分)

プログラム
2010年3月6日(土)
上毛高原12:09 着
12:30-13:00受付(片平・井上)
13:00-13:05開催の挨拶(本田)司会運営(西村)
13:05-13:10開催地挨拶(古在)
13:10-14:10セッション突発天体・激変星(1岡崎)(2衣笠)(3野上)
14:10-15:10(4山中)(5久保田)(6西村昌)
15:10-15:40ポスターセッション+休憩
15:40-16:40セッションGAOES を利用した分光観測(7橋本)(8竹田)(9田口)
16:40-17:30(10 本田)(11 定金)(11.5 橋本10 分)
17:30-17:40休憩
17:40-18:20一般講演 (12 高橋) (13 田中)
18:30-19:00観望会(天候不良時は館内見学)
19:30-21:30懇親会(わらび荘)
2010年3月7日(日)
9:00-10:00一般講演(14 西村史朗)(15 比田井)(16 片平)
10:00-10:10休憩
10:10-10:50セッション 教育一般普及 一般講演(17 原)(18 加藤)
10:50-11:50(ぐんま天文台を舞台にした)普及活動について(本田)とまとめ
11:50-12:00おわりに際して(加藤事務局長)、集合写真
解散
上毛高原 13:24

講演予稿集

1日目

岡崎 彰(群馬大学) 「偏光分光観測で探る近接連星」
近接連星では、相手の星から質量が流入して星周物質がディスクを形成するなど、活動的な現象が起きていることが多い。偏光分光観測は、そのような近接連星系内の星周物質の空間分布などを探る新たな武器になりつつある。単独星の場合と比べて、連星の場合は、公転に伴う偏光特性の変化や食のときの変化を探ることによって、より詳しい情報を得ることができる。講演では、近接連星の偏光分光観測に基づく最近の研究のレビューを行う。
衣笠 健三(ぐんま天文台) 「ぐんま天文台での突発天体の観測」
ぐんま天文台では、150cm 望遠鏡+低分散分光撮像装置GLOWS を用いて超新星や新星などの突発天体の分光観測を行っている。最近の結果を交えて、これらの観測の紹介を行う。
野上大作 (京都大学) 「国内中小口径望遠鏡による突発天体・現象の連携観測」
日本は多数のメートル級の望遠鏡を持つ、望遠鏡大国と言える。一方、突発天体・現象の機構解明には、現象開始直後からの詳しい観測が必要である。この連携観測の全日本の組織作りを行うべく、呼びかけを行う。
山中雅之(広島大学) 「かなた望遠鏡による U Sco 2010 年のアウトバーストの分光観測」
今年の1 月28 日にU Sco のアウトバーストが確認され、かなた望遠鏡では発見後0.3 日後の分光観測に成功した。99 年,87 年のアウトバーストとの相異点を中心に報告を行う。
久保田香織(京都大学) 「『すばる』によるSS 433 伴星スペクトルの観測とコンパクト星の同定」
マイクロクエーサーSS 433 は銀河系内唯一の恒常的な相対論的ジェットを持つ連星系である。その発見から30 年、さまざまな波長で詳細な観測が行われてきたが、そのもっとも基本的な問題、コンパクト星が中性子星であるかブラックホールであるか、がわかっていない。我々はすばるによるこの天体の可視光分光観測データとGemini のアーカイブデータを詳細に解析することによって、この天体のコンパクト星が1.9 太陽質量以上4.9 太陽質量以下であり、ブラックホールであることを示唆する結果を得た。本講演では解析の詳細を発表する。
西村昌能(京都府立洛東高校)他 「西はりま天文台で行った新星様天体 TT Ari の分光測光同時観測高校生実習について」
洛東高校のSPP 事業で天体観測実習として西はりま天文台公園2m なゆた望遠鏡と60cm 望遠鏡を利用して、2009 年9 月に28 年ぶりに大減光した新星様天体TT Ari の測光分光同時観測を試みた。この内容を報告する。
吉岡一男(放送大学) ポスター「滑降シンプレックス法による成長曲線パラメータの決定」
成長曲線法で求める4つのパラメータ(両軸のシフトΔx,Δyとθ とlog2α)を自動的に決定するために、滑降シンプレックス法を適用して求め、従来の方法による結果と比較した。その結果、この方法の有効性が確認された。
今村和義 (岡山理科大学) ポスター「小口径望遠鏡による回帰新星U Scoの2010年爆発時における分光観測」
2010年11月28日にU Scoの爆発の報告が入り(vsnet-alert 11788)、我々は小口径望遠鏡(D=28cm, F10)と分光器DSS-7 (R〜400)を用いて、年1月28.8日(UT)から計二日間、U Scoの分光観測を行った。その結果、バルマー線ほか、ヘリウムや窒素などの輝線が見られ、Hα輝線のFWHMは約6000km/sに達しており、さらに約5000km/sブルーシフトした吸収線を伴っていた。
橋本 修 (ぐんま天文台) 「GAOES を用いた炭素星の可視高分散分光観測」
ぐんま天文台の150cm 望遠鏡と高分散分光器GAOES を用いた炭素星の可視高分散分光観測について紹介する。炭素の同位体比率を求め、恒星晩期進化を探るのが目的である。
竹田洋一(国立天文台) 「GAOES を用いた活動G 型星ξBoo A のモニター観測」
我々は活動が活発なG 型矮星ξBoo A の表面状態を明らかにするべく、ぐんま天文台の1.5m 望遠鏡+GAOES 分光器を用いた観測を続けている。これまで1 年数ヶ月に渡って得られたスペクトルを解析した結果を報告する。
田口 光(ぐんま天文台) 「RVTau 型星UMon の高分散分光観測」
ぐんま天文台の高分散分光器を用い、RVTau 型変光星のモニター観測を行っている。特にUMonについては、重点的に観測を行い、多くのデータが得られたので紹介したい。
本田 敏志 (ぐんま天文台)「明るい巨星の高分散分光観測 」
ぐんま天文台150cm 望遠鏡とエシェル分光器(GAOES)を使って金属過剰なものから低金属な星まで、主に明るい巨星の高分散分光観測を行い、トリウムなどの重元素の組成を調べている。
定金晃三 (大阪教育大学)「食連星ぎょしゃ座イプシロンの食開始期におけるスペクトル変化」
食連星ぎょしゃ座イプシロンは2009 年8 月中旬に27 年ぶりの食の開始が報告された。われわれは岡山観測所188cm 望遠鏡のHIDES 分光器と群馬天文台1.5 m 望遠鏡のエシェル分光器を用いて、食開始1 年前からモニター観測を行ってきた。今回は第一接触(2009 年8 月)から第二接触(2010 年1 月)までの間に見られたスペクトル変化の様子について報告する。
橋本修(ぐんま天文台)「GAOES の移設に関する考察」10分講演(7分+3分)
ぐんま天文台の高分散分光器GAOES の移設について検討する。ファイバー化によって装置を恒温室に設置し、光学系の真空化を行うことによって、さらに優れた精度と安定性が得られる見込みである。
高橋英則(ぐんま天文台)「近赤外分光観測による大質量星形成領域に埋もれたWC 型WR 星の探索」
Ib/c 型超新星爆発の前段階と考えられるWC 型Wolf-Rayet 星を探索・発見するための、CIV 近赤外輝線をトレーサーにした分光観測の手法と有効性、試験観測での候補天体の検出結果について紹介する。
田中培生 (東大理・天文センター)「1m クラス望遠鏡による大質量星の近赤外分光観測」
1mクラス望遠鏡+赤外線エシェル分光器での、大質量星を中心とした赤外線分光観測について紹介する。特に、Wolf-Rayet 星や黄色超巨星などの質量放出の様子についての観測結果を報告する。

2日目

西村史朗 「HD星表中の天体の同定」
HD星表に含まれるほとんどの天体を同定し、精密位置と固有運動の表を作成した。タイコ星表に同定した先行論文があるが、位置と物理データとに注目して改訂した。同定を困難にする諸問題に触れる。
比田井 昌英 (東海大学総合教育センター) 「金属欠乏星における銅組成の振る舞い」
岡山天体物理観測所で得られた金属欠乏星の銅組成を解析した。文献データとの併用を基に銅組成の振る舞いを明らかにし、化学進化について知見を得る。
片平順一(大阪科学振興協会 中之島科学研究所) 「プレオネ新円盤形成直前の、特異な金属線吸収成分の検出」
Be 型星プレオネの新しい円盤形成を確認した観測の5 ヶ月前に、FeII 線などに特異な吸収成分が現れている。この現象をプレオネの円盤形成の前兆と考え、検討したことを報告したい。
原 正 (埼玉県立豊岡高等学校) 「銀河スペクトルとハッブル則の高校向け教材の実践と評価」
銀河のスペクトルの輝線を解析ソフト・マカリで読み取りハッブル則を学ぶ教材の高校での実践とその評価を行った。
加藤 賢一(大阪市立科学館) 「市民講座『宇宙の元素を測る』の顛末」
一般市民向けに恒星スペクトル線を測定し、成長曲線法により鉄量を求める実習を行った。予備知識紹介に時間をとられ、初期の目的を達成し得なかった。

実行委員会構成

共催団体 (順不同、予定を含む)

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