ぐんま天文台 天文教育研究会 - 天体物理学の講義と観測実習をめぐる諸問題 -

会場:県立ぐんま天文台 映像ホール
日時:2006年3月5日(日)午後2時 〜 6日(月)正午

大学、高専等での天文教育の現場で直面している問題を、関係者が一堂に会して検討し、今後の取り組みを探る、これまでにあまり例を見ない機会です。

概要

天文学の本質のひとつは、観測で得られた材料から物理学を駆使して天体の情報を得るところにあります。 その典型として、スペクトルの観測から恒星大気の詳細を調べる分光学があり、これを取り扱う恒星大気構造論などの天体物理学の分野は天文学の教育においても極めて特徴的な課題となっています。 そして、天文学におけるこのような対象へのアプローチの手法は、より広い物理学的な素養を身に付ける意味でも重要な効果を持っています。

一方、天文学の教育を行っている大学などの教育機関は少数であり、大抵は規模も小さいことから、これまで恒星大気構造論などの天体物理学に関連した教育は個々の教員に任されており、それぞれがどのような形で実際の教育を行っているのかを相互に知る機会はほとんどありませんでした。 有力大学以外でも観測を指向した天文教育を行なっている研究者は少なくありませんが、どうしても孤軍奮闘となってしまっているのが実情です。

そこで、この研究会では様々な大学や教育機関などで、恒星大気の理論や観測を中心とした天体物理学の教育を行っている関係者で会合し、包括的な現状の認識を得て、それにより今後の発展や方針を探ることを目指したいと考えています。

近年では、大型望遠鏡や高性能の分光器を備えた公開天文台も数多く登場し、研究者の養成だけではなく、より広い意味での天体物理学や物理学の教育手段としても有効であると考えられます。この研究会をきっかけとして、幅広い天体物理学と自然科学の理解への取り組みを探ることも可能かもしれません。

大学、高専等で天文教育を行っている方、公開天文台の方をはじめ、興味のある方の幅広い参加をお待ちしております。

プログラム

2006年3月5日(日)

<開会>     14:00
<セッション1> 14:05-15:35
吉岡一男   「放送大学における天体物理学の講義とその評価」
放送大学における天体物理学の講義は放送授業と面接授業の形で行われているが、その内容および学生と教員による授業評価について報告する。
近藤雅之   「放送大学における面接授業「天体物理学入門」の内容とその反応」
放送大学で行った面接授業「天体物理学入門」の講義内容と受講生の反応について報告する。
田口 光   放送大学大学院における天文学の研究(仮)
<セッション2> 15:50-17:20
中田好一   「東京大学における天体輻射論の授業」
東京大学で行っている学部・大学院共通講義の「天体輻射の基礎」の授業内容について報告する。
三戸洋之   「木曽シュミット望遠鏡対物プリズム観測データを用いた学生実習」
木曽観測所では、毎年夏に東京大学学部3年生を対象とした学生実習が行われている。実習では、対物プリズムを用いて得られた恒星の低分散スペクトルに対し、波長較正、フラックス変換をし、黒体放射のモデルと比較することで、恒星温度の測定を行っている。今回の発表ではこの実習内容を中心として報告する。
安藤裕康   「東大天文学科での観測実習(分光学)について」
<ナイトセッション> 18:30-21:00
国民宿舎「わらび荘」にて懇親会
<オプション> 19:30頃-21:00頃
ぐんま天文台150cm望遠鏡にて天体観望。(一般向けの観望に参加する形です。

2006年3月6日(月)

<セッション3> 9:00-11:00
山下泰正   「輝線天体のスペクトル」
輝線天体(Be星,新星,共生星,ガス星雲,惑星状星雲などについて輝線化の理解の仕方
橋本 修   「ぐんま天文台の150cm望遠鏡と高分散分光器GAOES」
ぐんま天文台の主力である150cm望遠鏡と高分散エシェル分光器GAOESを始めとする各種観測装置の概要を報告し、天文学教育での利用の実態と可能性について議論する。
衣笠健三   「ぐんま天文台150cm望遠鏡低分散分光・撮像装置」
ぐんま天文台150cm望遠鏡低分散分光・撮像装置の紹介を行う。)
岡崎 彰   群馬大学教育学部における食連星観測(卒業研究)
群馬大学で担当している中で天体観測に深く関わるのは、卒業研究での食連星の測光観測である。その内容について報告する。
<ディスカッション> 11:00-12:00
<終了> 12:00

世話人

浜根 寿彦 (県立ぐんま天文台)
橋本 修  (県立ぐんま天文台)
岡崎 彰  (群馬大学 教育学部)
吉岡 一男 (放送大学 教養学部)
田口 光  (放送大学 教養学部/県立ぐんま天文台)

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