ぐんま天文台の研究活動

太陽観測

(太陽望遠鏡のドーム) (太陽望遠鏡)

太陽望遠鏡

ぐんま天文台本館の屋上に 4m ドームがあり、そこに格納されています。

直接投影/分光用の 30cm 反射望遠鏡 1 台と、ディスプレイ展示/撮像用の屈折望遠鏡 5 台を、同じ赤道儀に載せてあります。

(映像展示コーナー) (投影された太陽像)

映像展示

太陽展示コーナーでは、直接投影、スペクトル投影、ディスプレイ展示を行っています。

30cm 反射望遠鏡で集めた太陽光を光導管を通して導き、レンズで拡大して投影しています。 (太陽を観測するときには、目を傷めないよう、望遠鏡を直接覗くのではなく太陽投影板などに投影して見るのが普通です。)

(太陽のスペクトル)

30cm 反射望遠鏡で集めた太陽光を分光器室に導き、光を加工してスペクトル像をつくっています。

光を色にわけたものを「スペクトル」とよびます。 太陽展示コーナーのスペクトル(光の帯)を見ると、太陽から来る光は白一色ではなく無数の色が混ざったものであることがわかります。 この手法は天文観測/解析の基本で、天体の物理状態を測定することができます。

(Hα 線で見た太陽とフレア)

2001 年 4 月 10 日の大フレア

2001 年 4 月 10 日午後 2 時(日本時間)過ぎ、黒点群(領域 9415)でフレア(太陽面爆発)が発生しました。 近年では最大級のものです。 画像は、撮像用望遠鏡と CCD ビデオカメラを用いて、水素ガスに特徴的な Hα 線で観測した太陽フレアで、2 本の筋が明るく輝いています。

(フレア 1) (フレア 2) (フレア 3) (フレア 4) (フレア 5)

フレアは太陽の磁力線の組換えが原因で、太陽コロナ下層で起こると考えられています。 地上からの観測では、主に水素ガスに特徴的な Hα 線で現象が捉えられます。 Hα 線ではコロナ下部に接する太陽彩層を観測することになるので、フレア発生源の下方を見ることになり、主として降下物質の動き(フレア下方の磁場構造)が捉えられます。

太陽フレアが発生すると、地球では地磁気嵐が起こって衛星に障害を与えたり、無線通信に悪影響を及ぼすことがあります。 また、オーロラなどを引き起こすこともあり、大規模なフレアが発生した場合は、関東中部地方以北の低緯度地方でもオーロラが観測されることがあります。

太陽を観測することは、私たちの生活・環境への太陽の関わりを知ったり、天体観測への応用に使えたりと、大変意義のあることなのです。

ぐんま天文台では、太陽のさまざまな活動を捉え、太陽研究に貢献するとともに、みなさんにその成果をお伝えしていきます。

超新星の分光観測

(超新星 SN2001bg)

世界初、超新星 SN2001bg の分析に成功

それまで星が見えなかったところに、突如、明るい星が出現したかのように見える現象があります。 超新星は、このような増光現象の中でも、もっとも大規模なものです。 この度、ぐんま天文台では、2001 年 5 月 8 日(日本時間)に発見された超新星 SN2001bg の分光観測を世界に先駆けて行い、その原因をつきとめることに成功しました。

この超新星 SN2001bg は、イギリスのアマチュア天文家が発見したもので、かに座にある系外銀河 NGC2680(距離約 1 億光年)に出現しました。 超新星の明るさは、もっとも明るい時には、その銀河全体の明るさに匹敵するほどにもなります(右の図)。

(超新星 SN2001bg のスペクトル)

超新星の増光の原因を調べるには、天体からの「スペクトル」を観測する必要があります。 今回の観測は、ぐんま天文台 65cm 望遠鏡に「小型低分散分光器」を取り付けて行いました。 得られたスペクトル(右の図)には、鉄や硫黄、珪素などの元素によって光が吸収されている様子が見られます。 このようにしてスペクトルを解析した結果、この超新星は双子のような練成が関連しあって爆発を起こす「Ia 型」と呼ばれるタイプであると判明しました。 世界に先駆けて行われたこの観測の結果は、国際天文学連合回報 7622 号で世界へと発信されました。

天体の温度や組成、運動などを調べることができる分光観測は、天体を調べる基本的な観測手法の一つです。 特に、超新星などの突発的な天文現象は、いち早い分光観測が重要となります。 分光観測によって、その天文現象がどのようなものであるかをつかむことができるからです。 今後もこのような突発現象をふくめ、さまざまな天文現象の解明のために、ぐんま天文台の分光器の活躍が期待されます。

赤外線カメラ

(望遠鏡に装着した赤外線カメラ)

立ち上げを進めていた 150cm 望遠鏡用赤外線カメラが本格的な運用段階に入りました。 国内屈指の装置であり、その性能を十分発揮するため試験観測を進めています。 「赤外線」という新しい窓が群馬の地に開いたのです。

赤外線カメラとは

この赤外線カメラは、150cm 望遠鏡に搭載される主力観測装置です。 心臓部の検出器には、すばる望遠鏡の同種観測装置でも使用されている世界最大級の 100 万画素の検出器(赤外アレイ HAWAII, 1024×1024)を使用しており、世界的にも最先端です。

この装置の内部は、検出器内部で生じる熱雑音を抑え、星からの赤外量と装置自身の赤外量とを区別するため、常時摂氏マイナス 200 度程度に冷却されています。

赤外線観測の特徴

赤外線は可視光線に比べて波長が長いことから、これを利用した赤外線観測には次のような利点があります。

  1. 輝きだす前の低温度の天体(原始星)を調べるのに有効
  2. 塵などによる吸収の影響を受けにくく、透過性が高い(暗黒星雲の中の星間ガスが収縮して星へ成長する様子を観測できる)
  3. 水素分子などが出す特徴的な光を観測可能
  4. 市街光の影響を受けにくい
(赤外線で見た M42) (可視光線で見た M42)

新しい宇宙の姿が見えてきます。 ぐんま天文台の赤外線カメラは、試験観測を経て内外の利用者によってさまざまな研究に使用されていきます。 それらの観測研究によって、星の生成と進化等についての細かいシナリオが解明され、多様な宇宙のなぞの解明につながっていくのです。

共同利用型とは違って適時利用できること、大望遠鏡では得られない広い視野を持つこと、突発現象にもすぐ対応でき機動力を活かした観測ができること等、ぐんま天文台がこの有力な装置をもったことは大変意義のあることなのです。

この写真は M42(オリオン星雲)を赤外線(左)と可視光線で撮影したものです。 写真中央は「トラペジウム」という誕生して間もない星たちです。 写真や観望で見ると、この領域はガスで満ちあふれ、あまり星が見えません。 しかし、赤外線では輝き出す前の星々が無数にあることがわかります。 こういうガスの濃い場所で星が生まれているのです。


トップ(「新・銀河鉄道の夜」)

インパクぐんまパビリオン「星空と宇宙」トップ