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銀河Messier 101およびNGC 4568における超新星爆発の画像の公開

2023年5月に発現した超新星の画像を2点公開します。1つ目はは銀河Messier101内の超新星で、この超新星は日本人アマチュア天文家によって発見されました。2つ目は銀河NGC 4568で発現した超新星です。超新星は黄色の線で示されています。画像はぐんま天文台65cm望遠鏡で取得しました。

M 101銀河

M 101 (超新星出現前)

M 101と超新星 2023年5月24日撮影

M101 と超新星

NGC 4568銀河

NGC 4567(上)とNGC 4568(下)

NGC 4568と超新星 2023年5月24日撮影

超新星出現後

解説

系外銀河(注1)Messier 101(以下M 101)およびNGC 4568(注2)において、それぞれ、2023年5月19日と同14日(世界時、日本時間ではそれぞれ20日と15日)に超新星SN2023ixfおよびSN2023ijdが出現したことが報告され、群馬県立ぐんま天文台において同台が保有する65cm反射望遠鏡に搭載されたCCDカメラにより取得された画像でも確認されたので報告する(注3)。

恒星の一生の最後の爆発で突然明るくなる超新星は古くは明月記に1054年に記録があり(これは現在ではかに星雲として残っている)、以来数百年に一つ程度の記録が残されてきたが、昨今は超新星の探査はかなり自動化が進んだ。超新星の出現は超新星が属する銀河の数にほぼ比例することから、100億光年にもなる広大な宇宙の多数の銀河の中の超新星は次々に検出されるようになったものの、近傍宇宙には少数の銀河しかないため、近くの超新星は依然として珍しい現象である。今回提示する銀河M 101は距離約2000万光年という近距離にあるため、超新星は10年に一度程度の珍しい現象である(M101における直前の超新星は2011年のSN2011fe)。加えて、M 101に発生した超新星は山形県在住のアマチュア天文家の板垣公一氏によって発見された(注4)ものであることは特筆に値し、同氏が20年以上にもなる長い期間に170個以上もの超新星を発見されたことに敬意を表する(日本天文学会からも表彰されている)。今回確認された超新星はいずれもII型と分類される太陽質量の約8倍以上の大質量星が爆発したものである。

添付の4枚の画像は、M 101およびNGC 4568(2つある銀河のうち左下)の、超新星出現前と出現後の画像である。上が北、左が東、視野はおよそ17分角と8分角(60分角が角度1度に相当)。撮像日は2022年5月28日~2022年6月29日(1枚目)、2023年5月24日(2枚目)、 2023年4月17日~5月11日(3枚目)、2023年5月17日(4枚目)。

(注1) 系外銀河:太陽(系)は他の千億個程度の恒星とともに天の川銀河という一つの銀河を形作っているが、天の川銀河の外の宇宙空間に位置する銀河を一般に系外銀河とよぶ。その大きさには大きな幅があるが、今回の銀河はさしわたし十万光年程度で比較的大型の銀河である。このサイズの銀河は大きくは渦巻銀河と楕円銀河に大別され、画像のとおり、今回の銀河は二つとも渦巻銀河であり、このような銀河では星が現在でも活発に誕生することが多く、誕生した星の中でも大質量の星が今回のような超新星を起こす。

(注2) MessierおよびNGC:宇宙にある天体をリストしたカタログの名称で、Messierは1700年代後半に活躍したフランス人天文学者の名前、NGCはNew General Catalogの頭文字をとったものである。

(注3) M 101の超新星の発見があったことについての第一報は県立ぐんま天文台が継続して行っている普及事業の一つである天文学校の参加者によって当天文台にもたらされた。

(注4) 板垣氏の国際天文学連合(IAU)への報告によりSN2023ixfという番号が与えられた。自動化プロジェクトの一つであるZTF (Zwicky Transient Facility)探査を含め、板垣氏の報告以前の時刻の画像で超新星が検出できたという報告はあり、これらも、それらの時刻における光度を与え、また、検出されなかった場合でも超新星の発生時刻の早い側の時刻を絞り込む意味で重要な報告である。