C/2019 Y4 アトラス彗星

アトラス彗星の写真

アトラス彗星 ぐんま天文台 65センチ望遠鏡で撮影

今年5月下旬に太陽に最接近して明るくなるかもしれないといわれているC/2019 Y4 (ATLAS彗星)の近況です。

4枚のパネルはそれぞれ、3月25日(左上)、4月7日(右上)、4月14日(左下)、4月18日(右下)に撮像したものです。一番明るいところは「コマ」とよばれ、コマから左側に尾が伸びるのがわかります。ここでうつっているコマは彗星の本体の核から飛び出した「塵」による太陽光の反射です(※1)。

4月14日の画像では、何か事件が起きてコマの左に一つ明るい塊があるのがわかります。これが核が分裂してその断片から出た塵なのか、核はそのままで塵が大量に噴出して流れているのかはすぐには区別はつきませんが、コマに比べて左の塊は中心が非常に明るいわけでもないので、後者なのかもしれません。この塊がコマに対してどのくらいの速度で動いているか興味がある方は※2を参照してください。

ところで、明るさがまちまちにうつっていることも気になるかもしれません。各画像で積分時間は異なるので、画像で見える明るさは彗星の明るさそのものではなく、実際は最後の右下では最初の左上より約30倍も暗くなってしまいました。左下から右下の4日間でも半分くらいになってしまっています(※3)。

※1 核の大きさは10km程度です。彗星が距離1億km(太陽までの距離の程度)のところにある場合、その見かけの大きさ(角度)は
  10km÷1億km×206265≒0.02秒角 (1秒角=1/3600°)
にしかなりません。コマは10秒角弱にうつっているので、核よりはるかに広がっていて、別物であることがわかります。
なお、206265は、もののみかけの広がり(角度)を計算するときに、その大きさを距離で割った比を秒単位の角度に直すときの定数です(=180×3600/π)。

※2 コマと明るい塊の間は角度にして20秒弱です。※1の計算を逆に使うと、実距離は10000kmくらいになります。一番ゆっくり動いているのは7日の観測の直後に事件が起きて7日間でこれだけ広がった場合で、一日は86400秒なので、秒速20mくらいということになります。逆に塵が秒速1kmで離れていった場合(塵の速度としては非常に速い速度という感覚です)、3時間前に起きたことになります。ただ、14日には前後2時間くらいの観測ではあまり位置に変化はみられなかったので、前者に近い(だいぶん前に事件がおきた)ように推測されるところです。12日頃にデータがあれば、もう少し確実なことが言えたことでしょう。ほとんど曇っている日の観望会でも、見えるときだけなどと思って常に見ていないでいると、一瞬みえた木星の姿を見逃すといったことがよくあるのと同様だったのでした。

※3 18日は彗星の方向だけやや雲が出ていたのでこれよりは少々明るいのかもしれません。ただ、のびてうつっている周りの星を見てみると(彗星は星座の星に対して動きますがその彗星が止まって見えるように望遠鏡を動かすので、逆に星座の中の星が動いてのびてうつります)、明るさにムラはないので、画像を撮っている間はずっと同じような晴れ具合で雲が急に厚くなったようなことはなかったようです。

その後

4月28日にも撮影を行いました。2枚目の写真は1枚目と同じデータで、彗星の尾が目立つように画像処理したものです。

アトラス彗星の写真 4月28日 1 アトラス彗星の写真 4月28日 2