超新星SN2009Yを世界に先駆けて分析〜Ia型超新星と判明〜

超新星SN2009Y

図1 SN2009Y

図1は、NGC5728という銀河に現れた超新星 SN2009Y の画像です。ぐんま天文台の150cm望遠鏡にとりつけられた低分散分光撮像装置GLOWSにて、超新星発見から5日後、世界に先駆けてスペクトルを取得することに成功しました。

超新星 SN2009Y は、オーストラリアのパース天文台とアメリカのリック天文台により2月1日におとめ座にある銀河NGC5728 において16等程度の明るさで発見され、4日には14.9等にて確認されました(天文電報中央局回報(CBET)1684号にて発表)。図1は、ぐんま天文台150cm望遠鏡にて6日に得られたNGC5728とその超新星の画像です。銀河の中心核から北に25秒角、東に9秒角離れたところ(印をつけたところ)に超新星があります。

私たちは5日に発見の報告を受け、6日の観望会終了後、天体が昇ってきた午前3時ごろより150cm望遠鏡にとりつけた低分散分光撮像装置GLOWSを使って観測を行いました。

超新星SN2009Y

図2 SN2009Yのスペクトル 拡大

観測して得られたデータの解析を行った結果、図2のようなスペクトルを得ることに成功しました。このスペクトルを見ると、6200Å付近や5800Å付近に吸収線があることがわかります。これは、一階電離した珪素(SiII)や硫黄(S)による吸収線であり、他にも、鉄(Fe)などの吸収線も見られます。また、水素やヘリウムなどの吸収線が見られないなどといった特徴は、Ia型超新星の典型的なものです。この結果は、2月8日に天文電報中央局回報1688号にて発表されました。世界に先駆けてぐんま天文台でSN2009Yの正体を解明したことになります。ぐんま天文台における超新星の初期観測成功は、今回で12件目となります。

超新星
今までなかったところに突然星が出現することから「新星」という名や「超新星」という名がつけられましたが、実際には今まで暗くて見えなかった星が進化の最終段階で起こす爆発などにより明るくなって、あたかも新しい星が出現したように見える現象のことなのです。超新星は、その爆発の仕方やもとの星の種類などによっていくつかのタイプにわかれます。Ia、Ib、Ic、IIb、II-L、II-Pなどのタイプに分かれますが、観測と分析を行うことによってその超新星がどのタイプなのかが判断できます。
Ia型超新星
観測的には水素やヘリウムなどのスペクトル線は存在せずに、珪素のスペクトル線が顕著である超新星のタイプのことです。現象的には、連星系の一方が先に進化して「白色矮星」となっているところに、遅れて巨星になった他方の星のガスが流れ込み、白色矮星の質量が増加して急激な核反応(炭素から鉄を作る核融合)が起こり、白色矮星全体を吹き飛ばすような(中性子星などの核を残すこともある)大爆発を起こすもののことです。
SUPERNOVA 2009Y IN NGC 5728
K. Kinugasa and S. Honda, Gunma Astronomical Observatory (GAO); andH. Yamaoka, Kyushu University, write that a low-resolution spectrogram (range 410-800 nm, resolution about 500) of 2009Y (cf. CBET 1684), was obtained on Feb. 6.7 UT with the GAO 1.5-m telescope (+ GLOWS). The spectrum shows 2009Y to be a type-Ia supernova a few days before maximum light. Adopting the NED recession velocity of 2804 km/s for NGC 5728 (Catinella et al. 2005, A.J. 130, 1037), the expansion velocity derived from the Si II absorption minimum (rest 635.5 nm) is about 17000 km/s.
(天文電報中央局1688号前半より)
トップページへ 過去の天文ニュースへ