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下の図の矢印にある星は、ペガスス座に現れた増光天体です。11/7の22時ごろに150cm望遠鏡にてスペクトルを取得し、矮新星の「アウトバースト」と呼ばれる現象であることを確認しました。
ペガスス座に現れた増光天体。左はペガススの頭付近に現れたところを11月7日午後10時の空に印をつけたもの(ステラナビゲータにて作成)。右は実際に得られた増光天体の画像。
日本時間の11月6日20時ごろに山形県山形市のアマチュア天文家である板垣公一さんがペガスス座の方向に13等の増光した星を発見しました。板垣公一さんはこれまでも数々の超新星などを発見している日本でも有数の新天体捜索家です。この報告は変光星ネットワークのメーリングリストを通して、11月7日夕方に九州大学の山岡氏より確認観測のよびかけがありました。ぐんま天文台では当日の一般観望後に観測を試みました。雲が多いうえ、西の空低くになってきていたため、観測はたいへんでしたが、22時〜23時の時間帯の150cm望遠鏡の低分散分光観測装置GLOWSによる観測で、なんとかデータを取得することに成功しました。直後の解析の結果、この天体のスペクトルをみると、矮新星の「アウトバースト」と呼ばれる現象であることがわかりました。この観測の結果は国際天文学連合中央局電子電報(CBET)1564号にて報告されました。
矮新星とは、恒星のなれの果てである白色矮星と低温度星からなる連星系であって、低温度星から白色矮星にむかってガスが流れ込んでいるため白色矮星の周りに円盤を形成しています。この円盤を降着円盤といいます。アウトバーストは、この降着円盤に流れ込んでいるガスの量がある限界に達し、白色矮星に一気に落ち込むときに降着円盤の温度が上昇して明るく輝きだす現象です。超新星や新星などの増光などと比べて多少爆発規模が小さいことから、このような名前がついています。
矮新星の概略図。赤い低温度星と白色矮星からなる連星。白色矮星のまわりには降着円盤が形成されている。
このグラフがぐんま天文台で得られた増光天体のスペクトルです。右下がりの様子は数万度の高温物体からの光であることを示しています。また、水素による吸収線(Hγ、Hδ) が目立ちます。Hβは弱い吸収線、Hαについては弱い輝線がみられます。後者の2つについては、輝線成分にて吸収線が埋まってしまって目立たなくなっているようです。
以下、CBET1564号より。
Electronic Telegram No. 1564 Central Bureau for Astronomical Telegrams INTERNATIONAL ASTRONOMICAL UNION M.S. 18, Smithsonian Astrophysical Observatory, Cambridge, MA 02138, U.S.A. IAUSUBS@CFA.HARVARD.EDU or FAX 617-495-7231 (subscriptions) CBAT@CFA.HARVARD.EDU (science) URL http://www.cfa.harvard.edu/iau/cbat.html NEW VARIABLE STAR IN PEGASUS K. Kinugasa and H. Taguchi, Gunma Astronomical Observatory (GAO); and H. Yamaoka, Kyushu University, write that a low-resolution spectrogram (range 400-800 nm, resolution about 1.0 nm) of the variable reported on CBET 1562 was obtained on Nov. 7.6 UT with the GAO 1.5-m reflector (+ GLOWS). The spectrum shows a smooth blue continuum with prominent H-gamma and H-delta absorption lines. While the H-beta is a shallow absorption, the H-alpha appears as a weak emission line. Both of the hydrogen features seem to be filled by the emission core. These characteristics suggest that it is a dwarf nova in outburst. NOTE: These 'Central Bureau Electronic Telegrams' are sometimes superseded by text appearing later in the printed IAU Circulars. (C) Copyright 2008 CBAT 2008 November 7 (CBET 1564) Daniel W. E. Green