150cm望遠鏡、へびつかい座に現れた新天体の正体を明らかに!
〜スペクトル観測から増光初期の新星であることを確認〜

2008年5月31日、福岡県の西山さんと佐賀県の椛島さんによって、へびつかい座に新天体が発見されました。衣笠専門員はこの報告を受け、6月7日に150cm望遠鏡と低分散分光器(GLOWS)を用いて、この天体のスペクトルを取得しました。得られたスペクトルを詳しく調べた結果、この天体は増光初期の新星(*)であることがわかりました。

発見された当初は12等ほどの明るさでしたが、それ以前の観測ではこの位置に20等より明るい天体は全く観測されておらず、8等以上の急激な増光を示したことから、新星であると予想されていました。今回の観測で得られたスペクトルは、この予想を裏付けるものであり、今後の研究において新星のメカニズムなどを探る上で貴重なデータとなります。

この観測の結果は国際天文学連合中央局回報(IAUサーキュラー)8951号によって、世界中の天文研究者へ報告されました。

(写真:150cm望遠鏡に取り付けられた低分散分光・撮像装置)(写真:装置を真横から見たところ)

150cm望遠鏡に取り付けられた低分散分光/撮像装置(GLOWS)。突発天体などの観測を速やかに行うため、CCDカメラは電子冷却により常時低温に保たれています。

スペクトル

ぐんま天文台で得られた増光天体のスペクトル。水素のHα線、Hβ線、と酸素(O I)とそれに、1階電離した鉄輝線(Fe II)などの希薄な高温ガスの存在を示す輝線が見られます。これらの輝線は、爆発した新星から放出したガスに存在する元素によるものです。

IAUサーキュラー

2008年6月7日(世界時)にIAUサーキュラーで流されたぐんま天文台の観測報告。

想像図

新星の想像図。低温度星から白色矮星にむかって水素ガスが流れ込んでいる。

(*) 新星とは、これまで暗くて見えなかった星が突然明るく輝きだし、まるで新しい星が現れたかのように見える星の増光現象のことで、新しく星が誕生したのではありません。増光して、数ヶ月から1年以上かけて次第に暗くなっていきます。このような現象を起こすのは、恒星のなれの果てである白色矮星と低温度星からなる連星系で、低温度星から白色矮星にむかって水素ガスが流れ込み、ある程度以上になったとき、水素ガスが核爆発を起こし、急激に輝きだす現象です。

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