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図1は、2006年9月27日に発生したガンマ線バースト(GRB)の可視光残光の画像(図中の丸印)です。ぐんま天文台の150cm望遠鏡に取り付けられた可視光撮像装置により発生から約37分後に始めた観測の結果、126億光年先からの光をとらえることに成功しました。
GRBとは、宇宙のどこかで突然ガンマ線(可視光に比べ100万倍ほどエネルギーの高い電磁波)で0.1〜百秒程度の間だけ光る現象です。1960年代に発見以来30年もの間、全く謎の現象でしたが、最近になってGRB発生後にX線や可視光において明るくなっている残光現象が発見され、遠方の銀河における大爆発現象であることがわかりました。しかし、その謎がすべて解明されたわけではありません。その残光現象が見えないものも中にはありますし、また、残光現象は見えたとしても数時間から1日程度ですぐに暗くなってしまいます。このため、残光現象の追観測をするためには迅速な観測対応の体制が必要となります。
(図1) 150cm望遠鏡でとらえた 126億光年離れたところで発生した GRB060927 の可視光残光。
GRB060927は、GRB観測専用衛星Swift によって9月27日午後11時7分35秒(日本標準時)にてペガスス座の方向に発見されました。この発見情報は十数秒のちにインターネットを通じてGRBの追観測体制のある世界中の観測施設に配信されました。残光はすぐに暗くなってしまいますので、世界中といっても発生時に晴れた夜である地域しか観測することができません。ぐんま天文台はちょうど晴れた夜であり他の観測の最中でしたが、その報告を受け取ってすぐにGRB残光の観測に切り替えました。そして、発生から37分後の午後11時44分から観測を開始しました。その結果、約20等程度の残光を捕らえることに成功しました。
当日、日本では晴天に恵まれ、他でも観測が行われました。大阪大学の35cm自動望遠鏡では発生1分後、東大の木曽観測所では約20分後から観測して、それぞれ16等程度、19等程度と報告しています。ぐんま天文台での観測報告はこれらの後の時間を埋めるデータとなりそうです。そして、8m望遠鏡であるヨーロッパ南天文台のVLT(注1)により発見後半日ほど経過してから行われた残光の分光観測の結果、赤方偏移(注2)5.6、つまり126億光年離れたところであることが判明しました。現在推定されている宇宙年齢と比べると宇宙ができてから10億年程度しか経過していないときに発生したGRBであることになります。これまで観測できたGRBのなかで最も遠いものは赤方偏移6.3、つまり128億光年のものですが、今回のGRBはそれに続いて2番目に遠いものです。ぐんま天文台の望遠鏡を含め今回のGRBを観測した望遠鏡は国内の望遠鏡としてはおそらく最も遠い光をとらえたことになるでしょう。