ぐんま天文台職員がゼルドビッチ賞を受賞

COSPAR(宇宙空間研究委員会)から入った連絡によると、今月開催されるCOSPAR総会において、ぐんま天文台の河北秀世主任(観測普及研究員)に対して、ゼルドビッチ賞(Zeldovich Award)が授与されました。

この賞は、世界天文学連合(IAU)などの上部機関である国際科学会議(ICSU)直属の組織、COSPAR(宇宙空間研究委員会)から、顕著な業績をあげた若手研究者に贈られるもので、これまでに7人の日本人研究者が受賞していますが、過去の受賞者は主に日本の得意分野とされる科学衛星を使ったプラズマやX線観測の分野の研究者であったのに対し、今回受賞することになった河北主任の研究分野は、彗星核の構造や組成に関するもので、太陽系天体の研究に対する受賞は日本人としては初めてのことになります。

河北主任はさきに世界で2例目の彗星の氷粒検出成功など、彗星に関する観測研究で成果を上げており、これらの実績が評価されたものといえます。

表彰式は7月18日からパリで開催されるCOSPAR総会の冒頭に行われた模様です。

顔写真
河北秀世主任(観測普及研究員)
COSPAR (Committee on Space Research・宇宙空間研究委員会)について

1957年から58年の国際地球観測年に行われた、ロケットと人工衛星の研究の協同プログラムを継続するために、1958年の10月に設立された。Inter-national Council of Scientific Union(国際学術連合評議会:ICSU *)の決議に、「 COSPARの主たる目的は、世界の科学者に学術的なあらゆる種類の人工衛星の可能性を探究する手段を提供し、それによって得たデータを協同で交換することである」とうたわれている。

COSPARは国際的な学術組織で、宇宙船やロケット、気球など、あらゆる種類の基礎的研究の国際的規模の進展を目的とする。ICSUの下にあるCOSPARは、政治的考慮を無視し、すべての問題を科学的見地からのみ考慮する。日本の窓口は日本学術会議である。

* ICSU(International Council for Science・国際科学会議)とは

1931年に非政府、非営利の国際学術機関として設立された。事務局所在地はパリ。

学問分野を代表する約50の国際学術団体(国際天文学連合など)と約100か国の国家科学アカデミー(全米科学アカデミー、ロンドン王立協会等)などを束ねる科学者コミュニティーの国際的な要であり、UNESCOと国際的学術の促進と発達のために密接な協力関係にあるほか、多くの国際共同研究計画を展開している。

わが国はICSU創設以来、日本学術会議が国家科学アカデミーとして加入しており、分担金は加盟国中第3位である。

1963年に茅誠司氏(日本学術会議会長・当時)が副会長に、1999年には吉川弘之氏(同)が会長に就任している。

ゼルドビッチ賞(Zeldovich Award)について

ゼルドビッチ賞(ゼルドビッチメダル)は、ロシア科学アカデミーが、高名なアカデミー会員の天体物理学者ヤコブ・B・ゼルドビッチ(Yacov B. Zeldovich)を記念して、若手の優秀かつ業績顕著な科学者に対して贈るもので、受賞者には顕彰メダルと証書が授与される。

この賞は原則として2年に1度、8つの科学委員会(SC-A〜SC-H)*ごとに1名が選出され表彰されており、通常、隔年開催のCOSPAR総会の際に開かれる科学委員会の開会会合において授与式が行われる。

受賞候補者となるのは、COSPAR事務局のメンバー、COSPAR各科学委員会議長または副議長、ロシア科学アカデミー職員のいずれかの署名による推薦を受けた、受賞対象年末現在36歳以下の若手科学者である。これまでの受賞者のうち、日本人は7名(うち3名はCOSPAR総会が名古屋で開催された1998年の受賞)である。

*COSPARの科学委員会(Ccientific Commissions)の構成(カッコ内は日本人受賞者)

・SC-A 地球表面・気象

・SC-B 月−惑星(2004河北秀世(ぐんま天文台))

・SC-C 超高層大気

・SC-D 磁気圏プラズマ(1992大村善治(京大)、1998平原聖文(立教大))

・SC-E 天体物理(1996堂谷忠靖(宇宙研)、1998坂尾太郎(国立天文台)、2000鶴 剛(京大)、2002清水敏文(国立天文台))

・SC-F 生命科学

・SC-G 材料科学(1998稲富裕光(宇宙研))

・SC-H 基礎物理

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