ぐんま天文台で撮影・分光したニート彗星(C/2001 Q4)

ぐんま天文台では、ニート彗星(C/2001 Q4)を2004年5月14日に撮影、分光して画像とスペクトルを取得しました。この時、彗星は太陽に最も近づく1日前で、太陽と彗星の距離は0.96天文単位(1天文単位は約1億5千万km)、地球と彗星の距離は0.41天文単位でした。

画像は、口径25cmの反射望遠鏡と冷却CCDカメラを用いて青、緑、赤の3色で撮ったものを合成しました(各3分20秒間露出)。周囲が青緑色に写っている明るい部分は彗星の大気(コマ)です。コマからは、画面左下方に向かって、幅の広い塵の尾(ダスト・テイル)と、これに重なるように幅の狭いガスの尾(イオン・テイル)が写っています。画像は約50×30分角で、縦方向が約5万6000kmに相当します。彗星以外の星が流れて写っているのは、望遠鏡を彗星の動きに合わせて動かしたためです。画像の右方向が西(太陽の方向)になっています。
(撮影/画像合成:指導主事 倉林勉)

(写真:ニート彗星 C/2001 Q4)

スペクトルは、65cm望遠鏡と小型低分散分光器(GCS)、冷却CCDカメラを用いて取得しました(2分露出の画像を5枚合成)。スペクトル画像は、横方向が波長を、縦方向が空間的な広がりを示しています。グラフの右上の画像に分光器のスリットが写っています(左下から右上の暗い線)。このスリットを通り抜けた光を分光しているので、スリットの方向がスペクトル画像の縦方向に対応します。縦方向には、端から端まで一様な明るさで写っている成分がいくつかあります。これらは夜空に含まれる水銀などの人工光や自然光です。なお、スペクトル画像には擬似的に色をつけてあります。

グラフはスペクトルの相対的な強度分布を表したものです。スペクトル画像の横方向とグラフの横軸を対応させて並べてあります。薄いピンク色に塗った部分は、彗星のダストが反射した太陽光です。その上に彗星コマのガス成分がぎざぎざに見えています。コマの典型的な成分であるCN, C2, C3, NH2, [OI]があるのがわかります。このスペクトルを見る限り、ニート彗星は他の彗星と同じような成分でできているごく普通の彗星であると考えられます。
(スペクトル取得/解析:主任(観測普及研究員) 浜根寿彦)

ニート彗星のスペクトル
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