これぞ活動銀河中心核 (NGC 4151)

「これは教科書に書いてあった。」そういう事例に出会うことは年を重ねるごとに増えます。だが、これは、得心がゆく、ということとはかなり違うでしょう。活動銀河中心核は、個人的にはもう30年以上、耳にしていた用語でしたが、自分の観測で面と向かってそのエッセンスをつきつけられた、という感覚はありませんでした。思わずそんな瞬間だ、と思った画像が

活動銀河核の写真

です(※)。望遠鏡の指向調整用で積分時間はわずか10秒、確かに地味、そのもの、の画像ですが、見るべきは中央のほぼ恒星状にうつっている天体です。正体は渦巻銀河なのですが中心核があまりにも明るいため、円盤はほとんど影もない程度でも、中心だけは明るく恒星状にみえています。実際、星像の(半値)幅は視野の他の恒星と本当にほとんど変わらない約1.5秒角でした。また、恒星ではその光のエネルギーの源は中心の核融合反応であると教わりますが、活動中心核では中心のブラックホールの作る重力がエネルギー源です。星のエネルギー源としては重力は弱く核融合であることに人類は気がついたし、当時一応の納得はしたものの、この活動銀河中心核を見た瞬間に、逆に重力エネルギーの強さをまざまざと直視させられることになったのでした。比較的最近、小学校の来台で子供たちがコンピューターの銀河の映像をみて、その中心を指さして「あっ、ブラックホール」と叫んでいたことがありました。自分が子供のころと比べれば隔世のあいだに覚醒してくれたことは喜ばしいことです。そんな子供たちにこの画像を謹呈したいとも思ったのですが、私にとっては印象的な画像であっても、他人からすれば結局は教科書に書いてあることと変わらないかもしれません。そういう意味では子供たち各人が各人で各人の瞬間にブラックホールに出会う必要があり、こんな画像は不要なのかもしれません。その瞬間が訪れるまでは、子供たちの宇宙をしのぐ無限の夢想力で泳いでいってもらった方がよいのでしょうか。

なお、この銀河は、他の銀河のように普通に画像を作れば

銀河NGC 4151の写真

のようになります。

※残念ながら、多数の輝線が竹のように立ち並ぶスペクトルではありませんでした。