広報誌ステラーライト電子版 2016年4月(2)

就任ご挨拶

県立ぐんま天文台 台長   侭田 浩一
侭田 新台長 顔写真

このたび平成28年4月1日付けで、ぐんま天文台長を拝命いたしました。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。また、地元の高山村をはじめ関係機関の皆様、特にボランティアの皆様には、平素から絶大なるご支援・ご協力を賜り、この場を借りて衷心より厚く御礼申し上げます。

私事で恐縮ですが、これまで群馬県職員としては、前橋にあります「本庁」での勤務が長く、地域機関は20代の頃に中之条合同庁舎で勤務したことがあるだけでした。しかも、これまでは一般的な行政の仕事がほとんどで、教育委員会、とりわけ特定のテーマに特化した専門機関の所属長を拝命するとは思いもよりませんでした。天文に関して思い出すことといえば、中学生の頃、寒い夜にクラス全員で校庭に集まり、理科の教諭からオリオン座など冬の星座を教わったことや、高校時代に地学の授業で「ボーデの法則」や「ケプラーの法則」など習ったことくらいです。ですから、久しぶりの吾妻地域での勤務と馴染みのない部門での業務に、期待と不安が入り交じった複雑な思いを抱きながら、ぐんま天文台に赴任してきたというわけです。

さて、ぐんま天文台は、群馬県人口200万人到達を記念して建設され、天体力学の世界的な権威である古在由秀氏 (現名誉台長) を台長にお迎えし、平成11年にオープンしました。以来、口径150cmという国内有数の大きな望遠鏡をはじめとする、高度かつ先進的な設備を活用し、「観測研究」と「教育普及」の機能を併せ持つ施設として運営にあたって参りましたが、社会環境の変化や県民ニーズの多様化などを踏まえて、平成25年に基本方針を改定し、「教育普及」に軸足を置いた教育施設として、県民に親しまれる天文台を目指しています。また一方で、ぐんま天文台も開館から17年を経過し、さまざまな課題が明らかになってきております。まず、子持山の尾根、標高885mに施設が位置し、冷涼な気候と急峻な地形のため、建物や設備の経年劣化が進行しています。それらの改修・更新には多額の費用を要しますが、来館される皆様の利便性を損なわぬよう、限られた財源の中で計画的に実施していくことが必要です。次に、これまで累計で60万人余の皆様にご来館いただいておりますが、来館者数は天候に大きく影響を受けてしまう特性があります。悪天候でもお越しいただけるような施設になるには、ネームバリューやブランドの確立という面で改善の余地があると考えています。そのため、来館される皆様に対しては、接客や展示・イベント開催などサービスのより一層の充実をはかるとともに、来館できない皆様に対しても、講演・授業や観測会など職員が地域や学校に出向いて実施する行事や、広報媒体を活用した積極的な施設のPRを通じて、需要の掘り起こし・裾野の拡大をはかって参りたいと考えています。第三に、限られた人員で施設を運営しておりますので、県民の皆様や来館される皆様に十分なサービスを効率的に提供するためには、高山村をはじめとする関係機関やボランティアの皆様の一層のご協力が必要です。関係者の皆様には、引き続きお力添えを賜れれば幸甚です。第四に、前述のとおり気候や地形など立地環境が通常と異なることや、夜間に開館している施設であることから、来館される皆様の安全確保に万全を期することが、なにより重要であると考えます。

最後になりますが、ぐんま天文台にアカデミックな印象をお持ちかもしれませんが、決して堅苦しい施設ではありません。天文学のことをより深く専門的にお知りになりたい方はもとより、基礎知識のない方も大歓迎です。まずは、より多くの皆様に「来て、触れて、観て、楽しんで」いただき、来館後も宇宙に興味を持ち続け、自ら学び活動していただくきっかけになることを期待しております。職員一同、皆様のご来館を心よりお待ち申し上げております。ぜひ、お気軽にお立ち寄りくださるようお願い申し上げ、ご挨拶といたします。