過去のぐんま天文台談話会 #181-#190

(敬称略)

第189回 2017.5.18 14:00〜
須田 拓馬 ( 東京大学 )
「超新星連星におけるLi減少と超金属欠乏星の起源」

超新星爆発を起こす大質量星と小質量星からなる連星系では、超新星爆発時の爆風によって小質量星の表面の剥離やejectaの降着が起こりうる。このような星では小質量星表面でリチウムが減少する可能性があり、超金属欠乏星に見られるリチウム減少との対応が考えられる。実際、初代星のような金属量が極端に少ない星では爆発直前の星の半径が小さく、連星間距離が小さければ爆風の影響が大きくなることが期待される。本研究では、観測された超金属欠乏星が大質量星との連星をなす初代星であるという仮説を検証する。本研究は、大質量星の進化、超新星爆発と伴星との相互作用、および大質量星と小質量星からなる連星の形成可能性を柱とし、ぐんま天文台での観測は、超新星爆発の影響を受ける連星が存在しうるかを検証するうえで重要である。

第188回 2017.3.7 17:00〜
市川 良介 ( 放送大学 )
「アルゴル型連星U Cepに見られる Hα線プロファイルの変化」

2つの星がお互いを回っているものを連星といい、近接して公転周期が数日の Algol型という質量移動しているタイプがある。今回、ぐんま天文台で観測した U Cep ( ケフェウス座U星 )は、その中でも質量移動率が大きいことで知られている。伴星から主星へ移動したガスは高温となり、輝線スペクトルが観測される。これを高分散分光観測した結果を報告する。

※ 講師が、放送大学大学院の社会人学生として、ぐんま天文台の150cm望遠鏡と高分散分光器GAOESを用いて行った研究の成果です。

第187回 2017.1.17 14:30〜
佐藤 文衛 ( 東京工業大学 )
「若くて重い高金属量巨星を巡る惑星の重点探索計画」

太陽の2倍以上の質量をもつ重い恒星では、周囲の惑星系の様相が太陽型星とは大きく異なると言われている。しかし、視線速度法などでこれまでに発見された系外惑星の中で確実に重い恒星の周りを回っていると言えるものは少なく、統計的な性質の解釈が困難な状況にある。我々は、京大岡山3.8m望遠鏡にぐんま天文台1.5m望遠鏡の高分散分光器GAOESを移設して視線速度精密測定機能を追加し、同分光器を用いて確実に重い恒星であると目される高金属量巨星に対して重点的な惑星探索を行うことを計画している。講演では、本計画の目的や内容について紹介する。

第186回 2016.3.29 19:00〜
早野 裕 ( 国立天文台 )
「第一部:TMTと第1期観測装置IRIS 第二部:波面補償光学から波動場補償光学へ」

第一部ではハワイ島マウナケアに建設予定のTMT ( Thirty MeterTelescope ) の全体計画とその現状、そして日本の貢献内容について概説したのち、第1期観測装置であるIRISの目指すサイエンスとそれを実現する装置仕様、それから日本が担当するIRIS撮像系の開発状況について紹介する。

それに引き続き第二部では、講演者が長年携わってきたすばる望遠鏡の補償光学とその顕微鏡応用を説明し、その共同研究から着想した、波面補償光学から波動場補償光学への発展について、その基本概念と様々な応用範囲について展望を述べる。

第185回 2016.1.26 18:00〜
上塚 貴史 ( 東京大学 )
「高分散高空間分解能分光撮像で探るミラ型変光星の星周構造」

ミラ型変光星は小・中質量星の最終進化段階の天体であり、活発なダスト形成・質量放出現象を示す。これらのプロセスの理解には、星周構造を観測的に明らかにすることが重要である。星のごく近傍は近年の干渉計観測により探られつつあるが、恒星半径の数十倍付近を探る観測は少ない。本研究では代表的なミラ型変光星である o Cet および R Leo について、すばる望遠鏡搭載近赤外線分光撮像装置 IRCS と補償光学系 AO188 を用いて M バンドの高分散高空間分解能分光撮像観測を行った。これにより10 - 30 恒星半径に広がるCO分子ガスの構造をとらえることに成功した。これもとに数十年スケールの質量放出史や質量 放出風の形成について議論する。

第184回 2015.3.3 19:00〜
奥田 治之 ( 宇宙科学研究所/ぐんま天文台 )
「日時計の楽しみ -- 風変わりな日時計を作る --」

日時計にはさまざまな楽しみ方がある。何千年にもわたる歴史をたどる楽しみ、世界中に広がるさまざまな日時計を見る楽しみ、その原理と天文学を知る楽しみ、それに、さまざまな工夫をして作る楽しみなどがある。ここでは、それらを簡単に紹介しながら、一寸風変わりな日時計を作る話をする。

最近では、正確なクヲーツ時計、補正の入らない電波時計が出回り、原子時計、さらに、100億年に1秒も狂わない量子時計まで現れて、日時計は,今や実用的な価値をなくしてしまっているが、絶対、狂わない,停まらない日時計を見て、時の流れを知り、季節のうつろいを感じるのは楽しいことです。

第183回 2015.2.3 18:00〜
Sze-leung Cheung ( IAU Innternational Outreach Coordinator )
「International Year of Light 2015 and Public Naming of Exoplanets」

The International Astronomical Union (IAU) Office for Astronomy Outreach (OAO) is an IAU new office hosted at National Astronomical Observatory of Japan (NAOJ) at Tokyo. After the International Year of Astronomy 2009, IAU decided to establish the OAO to coordinate the international astronomical outreach efforts. Two major campaigns that OAO are running are the International Year of Light 2015 and the Public Naming of Exoplanets. IAU is one of the supporting organisation of the International Year of Light 2015 (IYL2015), and one of the IYL2015 cornerstone project is "Cosmic Light", which connect astronomy to light. OAO is the central hub of coordination for the Cosmic Light cornerstone. On the other hand, IAU has also decided to name exoplanets, however, using a different approach than the naming of solar system bodies like asteroids or comets, the naming of exoplanet will involve public voting and proposal nominations from public organizations.

第182回 2014.3.4 19:00〜
奥田治之 ( 元ぐんま天文台副台長 / 宇宙科学研究所 )
「銀河中心物語」

天の川( 銀河系 )はおよそ1000億個の星が円盤状に集まり、中には、ガスやチリが存在し、星の生成、消滅が繰返されているなど、さまざまな天体の大集団である。中心からおよそ2万4000光年離れた位置に太陽系があり、およそ2億年余りで回転していることもわかっている。

この銀河系の中心が、単なる、幾何学的中心、あるいは、運動学的な回転中心にすぎないのかどうかということに強い興味が持たれていた。しかしながら、強い星間吸収のために、光学的に観測が出来ないために、長い間、謎に包まれたままになっていた。それが、電波、赤外、X線などの透過性のよい電磁波の観測が可能になり、そこに、星の大集団、活発な大質量星の形成、超高温のX線放射、さらに、巨大ブラックホールの存在など、想像を絶する世界が展開されていることがわかってきた。

このような状況を、歴史を振り返りながら、簡単に紹介する。

第181回 2013.12.3 18:00〜
植田 稔也 ( デンバー大学 )
「星雲まつり2本立て」

(1) 差分固有運動法によるはくちょう座卵星雲星周殻速度場の探査
はくちょう座卵星雲は、惑星状星雲になる前段階の原始惑星状星雲のプロトタイプとしてよく知られており、その星周殻の形状は惑星状星雲の構造進化を知る上での示唆に富むとため、ハッブル宇宙望遠鏡で何度も観測されている。我々の研究グループでは、その豊富なハッブルのアーカイブデータを使い、同フィルターで数年の間隔をあけて取得された撮像データを比較する差分固有運動法という方法を用いて星周殻が拡がる速度を直接計測した。その結果を電波観測から得られる速度情報と付き合わせることで卵星雲までの距離を求め、また、星周殻が必ずしも対称に拡がっているわけではない兆候を検知した。

(2)ハーシェル宇宙望遠鏡による惑星状星雲サーベイのハイライト
ハーシェル宇宙望遠鏡はヨーロッパ宇宙機関(ESA)が打上げ、運用した遠赤外波長域で3.5mという大口径観測を可能にしたミッションである。我々の研究グループでは、ハーシェルの高空間分散能と減衰が起こりにくい遠赤外線の性質を最大限に利用して11個の惑星状星雲のサーベイを行い、いわゆる惑星状星雲の輝線星雲よりも外の領域の低温ダスト連続線、電離・中性ガスの微細構造線、分子ガスの回転遷移輝線の空間分布を検知することを試みた。得られたデータは感度の問題でマスロスの履歴を詳らかにするまではいかないが、ダスト、電離ガス、中性ガス、分子ガスそれぞれの空間分布を求め、観測的にガス・ダストの質量比とその空間分布を求めることで、ガスかダストのどちらかを観測してガス・ダスト比でスケールすることでもう一方の量を決めるという一般的に行われている手法が実際正しいかどうかの検証を試みた。

講演者と題目の一覧

概要集: 1-10,  11-20,  21-30,  31-40,  41-50,  51-60,  61-70,  71-80,  81-90,  91-100,  101-110,  111-120,  121-130,  131-140,  141-150,  151-160,  161-170,  171-180,  181-190,

今後の予定