(敬称略)
昨年10月に公開されたSloan Digital Sky Survey DR3において分光された銀河の観測データは、宇宙の大規模構造を形成した重力の普遍的な性質を反映していると考えられる。このうち、重力の特徴を表すと思われる(A)システムが非加法的か? (B)分布関数が長くテイルを引くか?の2つの性質に着目し、各種の統計力学の代表例として(1)ボルツマン統計力学、(2)空間的フラクタルな物質(ボルツマン統計力学)、(3)Renyi統計力学、(4)Tsallis統計力学の4種類の理論モデルを調べ、銀河の分布の様子(銀河の存在確率)を比較した。
結果は、Tsallis統計力学が最も良く観測データを再現し、重力が作る構造を再現する統計理論には、非加法性と分布関数の長いテイルが必要であることが明らかになった。理論モデルの比較には、パラメータ数にハンディを課す赤池指数(AIC)を使用している。
B型輝線星プレオネ( 28~Tau; B8e )は、34年周期の大きな測光・分光変化を示す。講演者は1969年以降の高分散分光観測モニター観測に加えて、1988年から偏光観測を追加した。その結果、電子散乱による円盤起源の偏光角も大きく変化することを見いだした。プレオネは周期218日の分光連星であり、( 周期はわからぬが )スペックル連星でもある。そこで、回転軸の空間移動は伴星による円盤歳差運動と見当をつけ、解析を行い、この結果、歳差角は59°、歳差周期は81年を得た。円盤半径は最大の時で、上記分光連星( e = 0.6 )の最接近時の2星間距離程度である。この結果、長い間未解決であった種々の長期分光変動をうまく解釈できる。
「科学と生活との乖離という認識を具体的なテーマに取り組むことで払拭し本質的な思考に慣れ、本物の意欲や夢、実感を得る方法として科学を再認識することを目的とする。」なんて、自分でも何を言っているのか、にわかにはわからないことを言って、小柴賞をいただきました。これを真顔で言える状況とは?
田舎の天文台の維持は、総力戦。"教育がどうの、理科離れがどうの"とかいう悠長なレベルじゃないんです。田舎では科学は偉くない、むしろ敵。なんとかせねば、サドンデス。軽やかに攻撃をかわし、できるだけ直接、誰にでもメリットのあるように。そんな環境が、科学や教育を考えさせ、自治の本質さえも教えてくれました。
ボランティアによるパソコン教室だって元々地元の人といっしょになって立ち上げたもの。今回は高校生達とブロードバンド、NTTもヤフーもやってくれないなら、ぼくたちでヤル!”まさか、ここまですることになろうとは。
B型の主系列星・巨星には、β Cep型・Slowly Pulsating B stars (SPBs)・Be星などの脈動型変光星が存在することが知られている。まず、これらB型脈動星の性質について簡単に紹介する。HIPPARCOSによる測光観測から、B型脈動星の中でもSPBsが多数発見された。そこで我々は、これら新たに発見されたHIPPARCOS SPBsの分光学的特徴を明らかにすること、特に線輪郭変動の検出を目的として、国立天文台岡山天体物理観測所188cm望遠鏡と高分散エシェル分光器HIDESを用いて観測を行なった。その結果についてお話しする。
恒星フレアはあらゆるタイプの恒星に普遍的に見られる現象ですが、特にフレア星(晩期型輝線星)、RS CVn型連星、T Tau型前主系列星では、太陽でのフレアよりも数桁も大きなエネルギー規模でのフレアが起こることが知られています。これらの巨大フレアの機構は未解明のままですが、太陽フレアが表面磁場の爆発的エネルギー開放現象であることが明らかになりつつあることを背景に、その理解がはたして巨大恒星フレアにも適用可能であるか、観測的にも理論的にも研究が勢力的に進められています。我々はHα領域の時間分解能高分散分光観測によってその機構に迫ることを考え、2004年10月に岡山天体物理観測所の188cm 望遠鏡/HIDESで RS CVn 型連星 V711 Tau の観測を行いました。本講演では太陽・恒星フレアに関するイントロを行い、我々のアプローチや観測結果の紹介、今後の展望などを述べます。
地球は、太陽の大気の外縁( 太陽風 )の中を運行しているので、太陽で起こるいろいろな現象の影響を受ける。その中で最も時間スケールの短いものは、数十分から数時間続くフレア爆発とよばれる現象で、その1〜2日後には地球に影響が及び、オーロラや磁気嵐が起こる。11年ごとに変動する黒点の発生数に連動して、太陽の明るさも0.1%程度変動している。数百年のスケールで見ると、黒点数の増減は常に11年ごとに起こるわけではなく、長周期の変動もあることがわかっている。これらの活動の起源は太陽内部での周期的な磁場の生成であるが、その基本メカニズムは実はまだ解明されておらず、太陽物理学の最大の研究テーマとなっている。
A型特異星( Ap星 )は数キロガウスの強い( 主に双極 )磁場をもつ星で、表面での希土類元素やクロム、水銀、マンガンなどの含有量が異常に多いことで知られている。Ap星はA型星の約10パーセントをしめているが、その比較的温度の低いグループのなかに、5分から20分程度の周期の変光を示すものがある。それらは rapidly oscillating Ap ( roAp ) stars とよばれており、1980年頃に最初の星が発見されて以来これまでに30個強のroAp星が知られている。roAp星の変光は強磁場のもとで星の外層が高周波脈動しているために起こっている。講演では、roAp 星の観測的性質と、強磁場の中で起こる星の脈動の特異な性質についてお話しする。
GRS 1915+105は、世界で初めて超光速運動が確認された銀河系内ブラックホールX線連星で、マイクロクエーサー(相対論的ジェットを伴うブラックホール)を代表する天体です。マイクロクエーサーの多波長同時観測は、X線・γ線で降着円盤近傍の現象をとらえながら、近赤外・電波でジェットを同時に追跡することを可能にし、円盤とジェットの相互作用を研究する理想的な実験場となります。今回は、2005年10月に我々が組織した多波長キャンペーンの概要および「すざく」衛星の現状についてお話しする予定です。
γ線バースト(以下、GRB)の研究は、1997年の可視光残光の発見以来、急速に発展してきている。GRBの観測衛星としては、HETE-II, Swift 衛星が活躍し、可視光残光探査のために各国で自動望遠鏡が立ち上げられ、運用が行われている。このような状況において、今年もGRB観測における重要な発見が行われた。short GRBの可視光残光の発見と、z = 6.3 の最遠方GRBの発見である。一方、ぐんま天文台においてもいくつかのGRB観測を行ってきており、現在もそのための観測装置を立ち上げているところである。本講演では、GRBの観測についてレビューを行い、ぐんま天文台におけるGRB観測とその体制について話を行う予定である。
撮像装置で空間分解できないような星のごく近傍領域の星周構造の研究には、偏光観測が有力な手法である。しかしながら、偏光はベクトル量であるために、モデルを介さずに観測データから直接物理量を見積もることが困難であり、これは連星の場合にも当てはまる。
そこで、我々は連星の理論散乱モデルを構築し、このモデルが作り出す偏光と連星の軌道運動やエンベロープの物理情報との関連を調べることで、実際の偏光観測からどのような物理情報を得ることが出来るのかを明らかにする研究を行った。本講演では、偏光とエンベロープの物理量との関係の詳細と、共生星Z Andの観測結果に適用した結果について報告する。
概要集: 1-10, 11-20, 21-30, 31-40, 41-50, 51-60, 61-70, 71-80, 81-90, 91-100, 101-110, 111-120, 121-130, 131-140, 141-150, 151-160, 161-170, 171-180, 181-190,