(敬称略)
自然界では、何が起こるか分からない。天文学の魅力は、そこに在る。定年退職を数ヵ月後に控えた小柴先生が``ツキ"を引き寄せ、超新星爆発によるニュウトリノがカミオカンデにやってきたのだと、当時先生の偉さの表現、すごさの人柄として言われたものだ。先生の偉大さは、実は、いつ何が起こっても、観測機器が発揮しうる最高の精度で観測をするという心構えと、それを可能とする実行力にある。
今から半世紀前に、いつものように、現国立天文台の塔望遠鏡のドームを開け、さて、太陽黒点の観測を始めようと思った清水実氏と海野和三郎氏は、分光器のスリット上におかしな現象を目にした。1956年2月23日03時45分のことである。白色光フレアとともにbluish redとかreddish blueとか話された色づいた光の波が、太陽縁を横切ったのである。( ここで、清水さん [ 註:ぐんま天文台参与 ] に当時の話をしていただきたい )
1989年8月16日0時54分、詫間等、松田正彦、田辺朗、小石川正弘、渡辺章、庄司豊子、高橋博子、佐藤敏秀、榎並雅、の諸氏は、黒点観測をしようとしたとき、あるいは観測中に、白色光フレアを見つけた。特に、詫間氏は、写真観測を行った。
同じ現象を、紫金山天文台でも観測をしていた。国際協力や情報の大切さを痛感した。中国では、He10830A線の分光観測であった。日本だけの観測から、白色光の輝点と、Hα線のそれとが、高さの差はあれ、ほぼ同一の場所であると書いてしまった。紫金山天文台のHα線観測をしらべてみると、同一とはいえないことがわかった。
この結果は、困ったことになる。太陽フレアは、コロナ底部で加熱・加速が起こることに起因すると考えられている。それならば、光球で輝く白色光は、光球とコロナ底部との中間に在る彩層にも、エネルギーがおとされ、Hα線でも輝くはずである。このフレアのエネルギー発生源は、光球底部なのだろうか。野辺山電波観測所の柴崎清登氏は、low beta ではなく、high betaに起因するフレア理論を提出した。誰でもが、観測可能な白色光フレアにまつわる話をしたい。
CIAOはすばる望遠鏡用の赤外線コロナグラフカメラである。2000年にカメラ単体のファーストライトを迎え、2001年には補償光学とのカップリングに成功し、既に共同利用観測も開始されている。本講演の前半では、CIAOを用いてもっぱら試験観測中に得られたサイエンスの紹介を行いたい。カバーするトピックは、若い星の星周構造、原始惑星系円盤、若い惑星の探査などである。
また、後半は、日本でも盛り上がりを見せつつある系外惑星探査について、その研究のイントロダクションと欧米・日本における将来計画について紹介する。
GAOES ( Gunma Astronomical Observatory Echelle Spectrograph )は、ぐんま天文台1.5m望遠鏡のナスミス焦点に設置された高分解能分光器である。エシェル回折格子を用いており、高い分解能とともに非常に高い観測効率を実現している。これまで長い間にわたって製作と調整作業が続いてきたが、現在までにほぼ全ての基本要素が完成し、ファーストライトを導入するに至っている。分光器の基礎から始めてGAOESの特徴を議論し、この分光器が同種の観測装置として界世的に最高水準のものであり、かつ、あまり理想的とは言い難い国内の観測環境に於いても、非常に高い効率で高度な研究活動に利用できるものであることを、現状の報告とともに紹介する。
地球環境は如何なる歴史のもとに現在の状態にたどり着いたのか ?また将来、地球環境はどう変わっていくのだろうか ?このような問いに答えるためには、各惑星で起こっている物理化学過程を互いに比較検討し、どのようなプロセスが現在見られる種々の状態への分化をもたらしたのか解明する必要がある。固体惑星として見た場合、大きな違いを持たない金星大気が、地球と全く違う様相を呈していることは系外惑星の観測的研究の上においても非常に示唆的である。また現在の金星大気の持つ大きな角運動量などを含めて、金星大気には大きな科学的な謎が残されている。本講演では、最近発見された金星大気における近赤外線波長帯の窓を用いて金星大気の運動と気象学的な変遷を調べる意義と地上からの金星観測の重要性について紹介する予定である。
銀河系内にあるブラックホールX線連星のほとんどにはジェットが存在することが知られており、活動銀河核(AGN)との類似性からしばしばマイクロクエーサーと呼ばれる。これらは、太陽質量の数倍から10億倍に渡る広い質量範囲のブラックホールにおいて共通の物理が働いていることの証拠であり、ジェット生成の機構を探るための理想的な実験場を提供する。本談話会では、マイクロクエーサーの観測研究の動向をレビューし、多波長同時観測の重要性、ぐんま天文台の果たし得る科学的役割について述べる。
ISOなどでの観測結果から結晶質シリケイトのピークが検出されてきた。この結晶質シリケイトは forsterite ( Mg2SiO4 ) と enstatite ( MgSiO3 )でMg-rich なシリケイトであり、これらの鉱物は進化の初期の星だけでなく進化の進んだ星、彗星にも検出されている。さらに Caに富んだシリケイトも検出されている。さらに最近では、spinel MgAl2O4 も検出されて、これらは高温凝縮物が星の周りに生成されていることを意味している。また、硫化物FeS, 炭酸塩( calcite CaCO3, dolomite CaMg(CO3)2 ) など低温凝縮物なども検出され 多様なダストの組成が明らかになりつつある。これらダストの組成についてすこし報告したいとおもいます。また、薬大で取り組んでいるいろいろな鉱物の光学的性質の測定結果( 反射率・透過率など、スペクトルの温度依存性など )についてもあわせて報告したいと予定しています。
重力によって4質点が同一直線上を原点に関して対称的に運動する問題について相空間の構造を解析的に説明する。4質点が同時に衝突する特異点をブローアップする変数変換を用いて相空間を表す。全エネルギーが負の場合、任意の質量比のもとで相空間における対流と渦流が存在することを示す。また、脱出十分条件を導く。この事実を前提として、軌道を記号列に翻訳し記号力学の方法を用いると、カオス的な振る舞いを示すことができる。一方、数値計算によれば、実現不可能な記号列が存在することを指摘できる。しかし、その濃度は高々可算無限であり、振動解の存在やカオスを否定しない。また、このような相空間の構造は直線三体問題における構造と酷似していることを指摘する。
惑星の万有引力が引き起こす恒星の微小な視線速度変化をとらえることによって、これまでに約100個の太陽型星で系外惑星が発見されてきた。これらは、太陽系とは大きく異なる姿を示しており、その多様性の起源などが議論され始めている。しかし、惑星系形成を統一的に理解するためには、今後さらに、質量や進化段階の異なる星における惑星系の様子も明らかにしていく必要がある。
我々のグループは、岡山観測所の高分散分光器HIDESを用いて、中質量星であるG型巨星の視線速度サーベイを行なっている。G型巨星は、スペクトルに多数の細い吸収線を示し、恒星の表面活動も比較的穏やかなため、主系列段階では困難な中質量星における惑星検出が可能である。HIDESでは、約180個のG型巨星を5-10m/s程度の精度でモニターしており、現在約2年が経過したところである。
本講演では、現在世界中で行なわれている系外惑星探査とこれまでに見つかった系外惑星の様子、視線速度精密測定の方法等と併せて、我々のサーベイの現状を紹介する。
ガンマ線バースト(GRB)は、1997年のBeppoSAX衛星によるX線残光の発見、それに続く可視光残光の発見により、宇宙論的遠方の爆発現象であることが分かってきました。また、GRB位置速報衛星のHETE-IIの成功によって、2002年夏頃からバースト直後の観測が可能となり、にわかに新たな観測事実がもたらされ、GRBの研究は急展開をむかえています。美星天文台でも2002年8月13日,10月4日,2003年3月29日に残光を捉えることに成功し、10月4日にはその短時間変動を検出しました。これら観測成果ついてお話しします。
1990年7月、紀伊半島の過疎の町にみさと天文台がオープンした。交通の便も非常に悪いこの天文台の運営を任された私が思いついたのは、インターネットの利用であった。地球の裏側からの望遠鏡利用や、様々な天体現象のインターネット中継を通じて、天文教育の新しい可能性が開拓された。この活動は、天文教育の実践だけに終わらず、IT方面と地域振興へと活動の幅は広がっていった。本講演では、地方のインターネット利用の教育的価値だけでなく、地方の天文台の1つの生き方について述べたい。
概要集: 1-10, 11-20, 21-30, 31-40, 41-50, 51-60, 61-70, 71-80, 81-90, 91-100, 101-110, 111-120, 121-130, 131-140, 141-150, 151-160, 161-170, 171-180, 181-190,