2015年1月10日午前0時撮影 観察用望遠鏡2号機+デジタルカメラD40 (1分露出)
拡大して見る。右下にうっすらと尾が見える。
1月7日に、「ラヴジョイ彗星」(符号:C/2014 Q2)が地球から約7,000万kmまで接近しました。今後2週間程度は、広がった姿全体の明るさが4等級〜5等級台を保ち続けると予想されますが、6等星(月明かりや人工光のない暗い空で、肉眼で見える最も暗い星)を敷き詰めてこれぐらいになっていると思えば、肉眼での確認が困難だということがわかります。
ならば、大きな望遠鏡で見えるのではないかと思って期待すると、今度は広がった姿であることが仇になって、一部だけが見えるようになり、視野全体がぼんやりと白くなるだけになってしまいます。
このように、彗星は肉眼で見る機会は滅多になく、大型望遠鏡では姿が広がりすぎていて、「見えているのに見えない」という、なかなか手強い天体です。
ではお手上げかというと、そんなことはなく、双眼鏡や小型の望遠鏡が威力を発揮します。視野の目安は、月全体を余裕を持って見られることです。
ぐんま天文台の大型望遠鏡を使う通常の天体観望会では、上記の理由で彗星を見ることができませんが、双眼鏡を向ければ、彗星の姿を見ることができます。お手持ちの双眼鏡で試してみてはいかがでしょうか。
彗星の場所は毎日少しずつ変化します。
この彗星は、軌道が細長く(離心率:0.9977859)、地球の軌道面に対して垂直に近い角度である(軌道傾斜角:80.30202度)ことから、太陽系を包み込むように非常に遠方(地球太陽間の距離の約1万倍)に存在する「オールトの雲」と呼ばれる彗星の故郷からやってきたと推定できます。8,000年に一度の回帰(太陽の近くに戻ってくること)と言われていますが、細長い軌道を巡るうちに、惑星その他の天体の重力を受けたり、太陽近くで彗星自身が活動(ガスの放出など)したりして、軌道が変わる可能性が高いため、周期彗星とみなすことはできません。(便宜的に「周期」を計算できますが、これに意味があるとみなすことができません。)
オールトの雲からやってくる彗星は毎年多数見つかっています。そのほとんどが彗星探索者や研究者のほかに知られることなく"ひっそりと"やってきて去っていきます。それはまるで、大きな羊の群れからはぐれた羊がふらふら近寄ってくるようにも思えます。一頭一頭の羊には、ちょっとした模様があったり、ときどき跳ねたりなど、それぞれなにがしかの特徴があって区別できるかもしれませんが、羊は羊です。
ですから、「8,000年に一度しか見られない」といって「珍しい」と言うのは的を外していることになります。次の目撃できそうな「迷い羊」はいつ近寄ってきてくれるかな、どんな「姿」や「態度」を見せてくれるかな、と待つのが彗星観察の楽しみでもあり、わくわくするところでもあります。