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ぐんま天文台 > 特集・画像等 > 天文ニュース > ユニバーサル天体望遠鏡の開発 (2011年)

ユニバーサル天体望遠鏡の開発

ユニバーサル天体望遠鏡についての詳しい記事を別に掲載しました。(2013年3月30日)

ぐんま天文台では、身体に障がいがある方でも無理のない姿勢で覗くことができる移動可能な望遠鏡を開発し、2011年11月から病院等での出張観望会で活用しています。

ユニバーサル天体望遠鏡

2010年秋に県内の医療施設で天体観察会を実施した際、ベッドから起き上がれないお子さんがいました。天文台職員が自家用車に常備していた小型の望遠鏡を使ってどうにか月面のクレーターを観察できました。その時の、お子さんの感激した顔が忘れられず、「無理のない姿勢のまま天体観察を楽しんでもらえるようにしたい」との思いから、本機材の開発をしました。

車椅子に対応した光学装置は、公共施設の大型望遠鏡(ぐんま天文台の65cm望遠鏡など)には備え付けられている場合もありますが、それらは各施設の望遠鏡ごとの専用品のため、他の望遠鏡には取り付けることができません。一方、移動・組み立て式の小型望遠鏡に使用できるようなものは市販されていません。

開発に当たってのコンセプトは3点です。1点目は、ベッドに寝た人や車椅子を利用している人が、無理のない姿勢のまま望遠鏡に接近し、安全に観察できること。2点目は、天体の姿がなるべく劣化せず、月面のクレーターはもちろん土星の輪や木星の縞模様などが確認できること。そして3点目は、市販の部品を多用した構造であることです。特に3点目は、特殊な部品を必要としないことで普及を容易にし、他施設での2号機、3号機の製作にもつながるようにと考えたものです。

なお本機材は、今回試用した望遠鏡(市販品)とほぼ同等のスペックのものであれば、学校などが所有する市販の小型望遠鏡にも取り付けが可能となっています。

ユニバーサル天体望遠鏡の形状

全体の概観。写真の左が通常の望遠鏡、右が改良した望遠鏡。市販の望遠鏡の接眼部に、回転可能な特殊光学部(写真赤印)を取り付ける。また、望遠鏡の脚部も短いものを作り直した(写真黄印)。望遠鏡の架台(動かすための器械部分)を低く設置することにより、室内からの窓越しの観察もある程度可能になる。

車椅子で通常の望遠鏡を覗く場合   車椅子でユニバーサル天体望遠鏡を覗く場合

車椅子に座っている状態で覗いているイメージ。車椅子を利用したまま、無理のない姿勢で覗き口を自分の目の位置にもってくることができる(写真右)。左は通常の望遠鏡での観察の様子。姿勢がかなり苦しい。

仰向けの状態でユニバーサル天体望遠鏡を使う

ベッドに横たわった状態で覗いているイメージ。ベッド(ストレッチャーなど)に寝た仰向けの状態でも、覗き口を自分の目の位置にもってくることができる。