マックホルツ彗星

この彗星は、2004年8月27日、アメリカのアマチュア天文家マックホルツ氏が、口径15cmの望遠鏡で発見したものです。発見時は暗かったのですが、太陽に近づくにつれて明るくなってきました。同時に地球にも近づいてきたので、ぐっと明るく見えるようになり、天の川が見える夜には、ぐんま天文台でも肉眼で位置が分かるようになっています。

マックホルツ彗星は、2005年1月6日に地球に最も近づいた後、1月25日に太陽に最も近づきます(太陽まで1.2AU(注1))。この彗星は地球との位置関係が良く、日本では午後8時にもなれば南東の空に昇っていて、真夜中には空高く見えます。特に1月7日から9日の3日間はおうし座のすばるの近くに見えるので、すばるを目印に探せば、慣れない人でも自分の力で見つけられるのではないでしょうか。コンサートに持っていくような双眼鏡があると、彗星を見る強力な道具として役に立つことでしょう。

ぐんま天文台では、月が昇っていない暗い空に恵まれる1月前半に冬休み特別開館を実施して、毎晩天体観望を行います。期間は1月5日(日)〜10日(金)です。空の主役はもちろんこのマックホルツ彗星です。ぜひご覧ください。

(注1)AU: 天文単位。1AUは地球太陽間の平均距離で、1億5千万kmに等しい。

マックホルツ彗星の写真

2004年12月3日、観察用望遠鏡と冷却CCDカメラで撮影しました(倉林勉(指導主事)観測)。星が線になって写っているのは、彗星の動きに合せて撮影したためです。コマと呼ばれる彗星の一時的な大気が、ぼうっと淡く広がっているのがわかります。緑色のように見えるのは炭素が2つつながった分子(C2)の光が多いためです(図表解説参照)。

マックホルツ彗星のスペクトル

マックホルツ彗星のスペクトルです。彗星のコマに含まれるガスの成分が見えています。2004年11月27日、65cm望遠鏡と小型分光器で観測しました(浜根寿彦(観測普及研究員)観測)。グラフの横軸は波長を示し、虹で言えば、左が紫、右が赤に相当します。縦軸は光の強さ(明るさ)を示します(6250Å(注2)での強さを1としてあります)。CNが強く輝いていますが、可視波長域に入っていないので、目では見えません。双眼鏡や望遠鏡で見たときには、主にC2の緑色の輝きが目立って見えます。

マックホルツ彗星は典型的なオールト雲彗星のガス成分を示しており、可視光で調べた限りでは、ありふれた彗星のようです。

(注2)Å: オングストローム。1Åは1cmの1億分の1の長さで、水素原子の大きさ程度。

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