さそりの駅

さそり座
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「そしたらいつかさそりはじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たって。」

賢治にとってさそり座のアンタレスの赤さは、「みんなの幸せのために真っ赤な美しい火になって闇を照らしている」象徴的な存在だったのです。

科学の目
  • アンタレスは、「火星に対抗するもの」を意味します。
  • 赤い星は温度が低く、3000〜4000 度程度となっています。温度が低い星には二つの種類があります。一つは、太陽質量の数分の一程度の小型の星です。もう一つは、星の一生の末期に巨星になったとき体積が増えて表面温度が低くなった星です。
  • アンタレスはスペクトル型が「M1.5I」の赤色超巨星です。主系列星の時代はたぶん太陽質量の 20 倍程度の青白い星だったはずです。また、アンタレスは B4V の伴星を持っています。
  • 連星の一方であるアンタレスが先に進化して超巨星になったわけですから、遅れて(何年後かは分からない)伴星が巨星になるころ、アンタレスはすでに超新星爆発を起こし、中性子星となっているでしょう。この場合、アンタレスは十分に大きくないので、ここで起こる超新星爆発では、たぶん中心核がブラックホールになることはないでしょう。

ケンタウル

「ケンタウル露をふらせ。」

ケンタウルス座は、本州以北では見えない星座です。

ケンタウルス一族の住むぺリオンは薬草の産地であり、一族の賢者ケイロンは大自然の恵みの神とあがめられていました。

「露」は大地の恵み、いやしの露を指しています。別な考えとして、賢治は敬虔けいけんな仏教信者だったので、儀式のときに降らせる「紙ふぶき」を意識していたとの説もあります。

科学の目
  • ケンタウルス座の α 星は、太陽以外の恒星としては最も地球に近い恒星です。その距離約 4.4 光年、三重星です。主星は「G2V」で、太陽とほとんど同じ大きさの主系列星です。伴星は「K1V」と「M5.5V」です。
  • 星までの距離を計る方法の一つに「年周視差」があります。比較的近く、せいぜい数百光年以内の天体を対象にします。原理は三角測量で、地球が公転する円の直径を底辺とするとき、目標天体を頂点とする三角形ができます。この三角形の辺の長さを実際の数字で計算するのです。
  • 天文学では、この年周視差が 1 秒角(3600 分の 1 度)になる距離を「1 パーセク」と言う単位で呼びます。約 3.26 光年に相当します。
  • ケンタウルス座の α 星(α Cen、アルファケンタウリ)は 1 パーセクより少し遠いので、見かけの位置が半年で 0.7〜0.8 秒角動くということになります。
ケンタウルス座
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