広報誌ステラーライト電子版 2016年4月

退任あいさつ  〜ぐんま天文台での業務を振り返って〜

前 県立ぐんま天文台 台長   五十嵐 章人
五十嵐 前台長 顔写真

思い起こせば、平成25年3月下旬、当時、ある所属の次長職であった私に「県立ぐんま天文台 台長」との人事異動内示がありました。星空をただ眺めることは好きでしたが、「天文」といったことには全くの門外漢であった私が、事務職台長第1号として、平成25年4月ぐんま天文台に赴任し、そこから天文台長としての生活が始まりました。

ぐんま天文台は、全国的に見ても県立の公開天文台として希有な存在であり、設立当時(平成11年)は最先端であった150cm大型望遠鏡をはじめ、65cm大型望遠鏡、太陽望遠鏡などの機器を備えた施設で、外観とともに観測機器類には圧倒されるものがあります。また、標高885mに位置する施設の特殊性から平地とは全く異なる気候で、春から秋までは比較的快適に過ごすことができますが、冬期は零度を下回る日々が続き、さらに積雪もある厳しい状況下での勤務は、職員にとっても大変厳しく、寒がりな私にとっては結構つらいものがありました。

ぐんま天文台の業務として、「天文学の教育普及に重点をおいて、学校や地域と協働し,学習の機会を提供する教育施設」とされており、「本物体験」、「施設や観測データ等の公開」、「学校現場や地域での天文学普及」等の事業を着実に進めることが求められています。これらの考え方をベースに、赴任当初から気になっていた懸案等については、積極的に改善を進めたほか、今まで少し疎遠になっていた地元との関係改善にも注力しました。

そのような状況の中で、施設運営に関しては、有名建築家によるデザインの建物、設備や最先端の観測機器群は、ほとんどがオンリーワンの特注品で構成されており、経年による老朽化が進む中での修理、改修には手間と多額の費用がかかる状況となっていました。そこで、修理改修計画を早急に策定し、優先順位をつけた計画的な修繕改修を進めることにしました。予算要求にあたっても、この計画に基づき必要な予算を必要なだけ要求するという、従前とは異なった手法に改善しました。

また、事業面に関しては、天文現象に合わせたイベントの開催や最新の天文情報を提供するなど県民ニーズに合ったイベント等を充実するとともに、連携・協力をキーワードに地元高山村、商工会、村内施設(道の駅中山盆地、ロックハート城)、さらに県立関係施設等とも積極的な連携を図り、相互の施設が「ウィン・ウイン」の関係、相互にメリットを享受できる関係になることを目指し各種連携事業を実施してきました。

さらに、星空を観光資源と捉えそれを積極的にPRしようとする「星空鑑賞会」実施団体に対しても、星空案内の指導者育成やノウハウ提供などで協力するとともに関係団体等の組織化(協議会の立ち上げ)を積極的に支援しました。次に、教育普及事業の推進についても、職員との意見交換、提案等を受け、新たなイベントの創出、PR方法の改善、来館者目線に立った利用方法の改善や授業サポートの内容充実とともに団体利用の推進に努めた結果、各指標が若干の増加傾向になりました。

このように、3年間の在任中、職員各位の協力のもと、従前ではなかなか手をつけられなかった様々な分野に積極的に取り組むことができたことや新たな視点からの事業展開にチャレンジできたことは、よい思い出であり一応の達成感を感じています。しかしながら、その一方でまだまだやるべきことは多くあるとも感じておりますので、新しい体制による今後の事業展開に期待するとともに応援し、見守っていきたいと思います。

お世話になりました。 Thanks for your support and cooperation.